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「……おい、ふっか」
「んー? どした、翔太」
深夜の楽屋。
深澤辰哉は、自分の帰り支度もそこそこに、ゴミを片付けたり、明日のスケジュールの確認をしたりと動き回っていた。
目の下にうっすらとクマができているのを、渡辺翔太は見逃さなかった。
「お前、動きすぎ。目障りなんだよ」
「ひっど!俺、みんなのために片付けてんのに!」
深澤が笑いながら反論するが、渡辺は無言で立ち上がると、深澤の腕を掴んで強引にソファに座らせた。
「座れって言ってんだよ」
「え、何? 翔太さん、今日怖くない?」
「うるせぇ。……お前、顔死んでるぞ」
渡辺は、深澤の顔を覗き込む。
いつもはヘラヘラしている深澤だが、その瞳の奥には隠しきれない疲労が滲んでいる。
渡辺は大きく舌打ちを一つした(これは不機嫌なわけではなく、照れ隠しだ)。
「……いつも俺の世話しやがって。自分のこと後回しにすんな」
「いや、俺は別に……」
「黙れ」
渡辺は、座らせた深澤の隣にドカッと座ると、深澤の頭をガシッと掴んで、自分の肩に押し付けた。
「……貸してやるよ」
「……え?」
「肩。……いつも俺が寄りかかってるけど、今日は貸してやる」
ぶっきらぼうな物言い。
でも、その肩はちょうどいい高さで、深澤を受け止めている。
深澤は一瞬きょとんとしたが、渡辺の耳が少し赤いのを見て取ると、ふっと力を抜いて体重を預けた。
「……珍しいね。翔太がサービスしてくれるなんて」
「勘違いすんな。……お前が倒れたら、俺の世話する奴がいなくなって困るだけだ」
「あはは、結局そこかよ」
軽口を叩き合うが、渡辺の手は深澤の肩を抱き寄せ、ポンポンと不器用なリズムで叩いている。
そのリズムが、なんだか心地いい。
「……なぁ、ふっか」
「ん」
「……お前は、俺の財布だけどさ」
「否定しねーのかよ」
「財布だけど……中身が空っぽになっても、俺はそばにいてやるよ」
渡辺なりの、精一杯の愛の言葉。
金づるとして扱っているフリをして、本当は人間・深澤辰哉を誰よりも必要としている。
「……そりゃどうも。……じゃあ、翔太に捨てられないように稼ぐわ」
「バーカ。……今は休め」
渡辺が、自分の肩に乗っている深澤の頭に、そっと自分の頭を乗せる。
二人の頭がコツンと重なる。
「……ありがとな、翔太」
「……ん」
言葉数は少ないけれど、何十年も一緒にいる「悪友」だからこそ分かる温度。
普段は甘えん坊な渡辺が、ふっかさんを支える男になる夜。
この不器用な優しさこそが、深澤にとって一番効く栄養剤なのだ。
next…だてふか
コメント
2件
ツンデレすぎるだろしょっぴー笑!悪友独特の雰囲気好きだわー 続き待ってます!