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向かい側に彼が座り、いただきますと言って肉じゃがを口に運ぶ。

優しい味が体の奥まで沁みてくる。

こんな美味しい食事をしながら、復讐計画の話なんてできない。

そう思うくらい美味しい美味しいと言いながらたわいもない話を続けた。


本題に入ったのは、彼がシャワーを浴びるのを待って、ビールを開けて乾杯をしてからのこと。

ソファに私が座っていると、当たり前のようにその隣に彼が缶ビールを持ってきて座る。

妙なドキドキを抑えようと、ビールを喉の奥に流し込んで、ぽつぽつと話を始めた。


「永井くん、復讐計画も立ててくれるってほんと?」

「計画ってほどのものでもないですけど」


紺色のキャンバス地のソファはすごく座り心地がいい。木製のローテーブルはブラウンでベージュのラグが敷いてある。


「計画の前に、聞きたいことがいくつかあります」

「……なんでこうなったか。だよね?」

「はい、言いたくなければいいんですけど参考までに」

「うん……」


私はすっと座り直して、彼に向き合った。

「あのね、美濃(みのう)さんに彼氏を取られたのは二度目なの」

「昨日、そう言ってましたね」

「一度目は高2のとき、あからさまに乗り換えられたって感じだった」

「へー」

「まさか二回目があるとは思わなかったよ。なんなんだろうね」


下唇を噛み締めて顔が歪む。私はビールをぐびぐび飲み干すと、ふーっと息を吐いた。

「藤原さんに恨みでもあるんでしょう」

「やっぱり、そう思う?」

「はい。風見さんのことが好きなんじゃなくて、藤原さんを傷つけることが目的だと思います」


二度も同じことなんか起きませんよ。

そう言って永井くんは腕を組んだ。


「私、何かしたかのかな。美濃さんに」

「まあ、気がつかないうちに何かした可能性もあるし、向こうが一方的に恨んでるかもしれないし」

「うーん……思い当たることがない」


美濃燎子は高校の同級生。

私とは正反対のきれいでエキゾチックな魅力の持ち主で、黒髪のボブカット。個性的な印象があった。

私が当時付き合っていたのは一つ上の先輩。

突然別れを告げられたと思った次の日、燎子と手を繋いで下校しているのを見た衝撃はいまも忘れられない。


それでも周りの友達に励まされて、なんとか失恋を乗り越えた。

もう年度末の頃だったから、先輩は卒業し、その後燎子とどうなったかは知らない。

それから10年。もうすっかり忘れていた半年前、燎子が中途採用で入社してきたときはものすごくびっくりした。

向こうもまさか私がいるとは思わなかったようだ。


それでもお互い社会人。当たり障りない挨拶をし、配属された課も別だったため、特に接点もなく過ごしてきた。

いったいどうやって私と伊吹が付き合っていることを知ったのか。

何がどうなって、ふたりが付き合うことになったのか。

考えれば考えるほど悲しくて、目の前が霞んでくる。


高校の時だって、この前だって、私は真剣だった。

伊吹とは、結婚も視野にあった。付き合って1年半。30歳になるまでには結婚したい、そう伊吹に言われたこともあった。

あれは全部嘘だったのかな。私といた1年半は伊吹にとっては軽いものだったんだろうか。

楽しかった思い出が溢れ出して止まらなくなる。


「ご、ごめんっ。泣いたって、しょうがないよね。いまさらどうなることでもないし」

「……大丈夫ですよ、はい」


永井くんは、テーブルの下からティッシュを取り出すと私の前にそっと置いた。ありがたくそれで涙をぬぐい、鼻水を拭く。


「まだ、風見さんのこと好きなんですか」

「……えっと、あの……」


私は目頭を押さえながら、小さく頷く。


「だい、ぶ、気持ちに、整理、つけたつもりだっ、たんだけど」

「……」

「ごめんっ、ね、いきなり泣かれたら、困る、よね」


好きか好きじゃないかと聞かれれば、まだ好きなのだと思う。それでも付き合っていた時のような、慈しみや愛情は少しずつ薄れてきている。

忘れようと思っても伊吹とは同じ部署。連携は取らなければならないし、いやでも顔は合わせる。

あははと乾いた笑いを繰り出しても、涙が止まらない。

しばらく沈黙が続いて、少し落ち着いてきた頃、永井くんが口を開いた。


「大丈夫ですか」

「うん。ごめんね、話進めよう?」

「……復讐のゴールは美濃さんを退職させるってことでいいんですよね?」

「……う、うん」

「一番いいのは放っておくことだと思うんですけど」

「あー、うん。やっぱりそう思う?」


そんなやつに構う必要なんてない。それもわかる。

でも、このままじゃ許せない。そんなドス黒い気持ちが心のまわりにまとわりついているのも確かだ。


「人を貶めるなんて、したことあるんですか?」

「いや……ない」


あれこれ復讐に躍起になって、相手を貶めようとするのは自分の性に合わない。

それは自覚があった。


「美濃さんが自分から仕事を辞めてもらえれば一番いいですよね」

「まあ……それができれば」

「じゃあ簡単ですよ」

「え? 簡単って復讐が?」

「はい」


復讐が簡単とはどういうこと?

蜜音の花が開くとき~復讐のためにイケメン後輩と夜のサブスク契約結びました!?~

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