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もうそろそろ皆が知らせを聞いた頃だろう。
峰独りでやらせてしまったから、ずいぶん遅れてしまったかもしれない。
「産屋敷邸……」
やっと産屋敷邸が見えてきた。
鬼の気配がする。
懐かしい。
お館様の顔と共に浮かんでくる。
とある隊士の人。
長い間居たわけでは無いけれど、大切な場所。
大切な人を記憶してくれている場所。
だから、絶対に……
守
思わず耳を塞ぎたくなる豪音と共に、目の前の屋敷は爆発した。
一瞬が長く感じた。
まるで見せつけられているような気がした。
「あ………」
残酷なその光景に声も出なかった。
涙も出なかった。
悲しみなんて無い。
ただ憎悪だけが募る。
私の中の憎悪が……!
あれは、彼が殺された年だっただろうか。
私を鬼殺隊へと導いた隊士が訪ねてきた。
「この子が私の娘のキョウです」
父が私のことを誰かに紹介する。
その時ただ、私はずっと一つ向こうの畳の節目を見ていた気がする。
「へえ……」
父と私の前に座っていたその男は、私に少し近づき顔をじっと見る。
私はそれでも変わらず一つ向こうの畳の節目を見ていた。
「娘さんと一度2人きりにさせて頂けますか?」
「え……それは、あの、」
父が言葉に詰まったところを、男はもう一息つくと言う。
「安心してください。卑しいことはしませんよ」
「そう……ですか……なら、」
私の方を心配そうにチラッと見ると、父はそっと部屋から出ていった。
「ねえ」
「君は鬼に遭ったことがある?」
唐突なその質問に戸惑いつつ、下を向いたまま答える。
「鬼……とは?その前にあなたは誰ですか?」
「えー!まあいっか。俺は宮園。隊士をしているんだ」
そうだ。
この人は宮園さんだったんだ。
「それから、鬼って言うのは人喰い鬼のこと」
「人……喰い!?」
私は顔を上げて宮園さんを見る。
「あっ。やっとこっち見たね」
「そうそう。人を喰う鬼」
「………」
思い当たるとすればある。
彼と出会って生きたいって欲が出てきた時、あの変な男に心臓とやらをもらった。
その後だ。
彼は殺された。
未知の生物に。
そしてその生物を私は殺した。
「もしかして、心当たりがある?」
この人なんで分かったの?
「君のその顔からすると、大切な人に何かあったんじゃない?」
抉られるような、寄り添われるような、なんとも言えない気持ちになった。
こうも当てられている。
「図星だね。ここについては深く聞かないでおくよ」
そうしてよ。
もう言いたく無い。
思い出したくも無い。
「ところで君はさ、
鬼殺隊って知ってる?」
「きさつたい……?」
「うん。鬼に殺すに軍隊の隊で、鬼殺隊」
「と言っても君は子供だから漢字は分かんないかな……。そういえば!何歳か聞いてなかったね。今いくつ?」
「……11」
「そっか。なら良いかな」
「鬼殺隊士は、別称・鬼狩りって言われるんだ。君は賢いだろうから、もう察しはついたよね」
鬼殺隊は鬼を退治する組織……
彼を殺したあの生物達を堂々と殺せる組織。
れっきとした組織があるなら、私のような人たちはたくさん居るはずだ。
その分鬼もたくさん居る。
「君も鬼殺隊へ入らないか?」
「君にその気があるのなら、鬼殺隊について教えよう」
いいよ。
やってやる。
鬼を全滅させてやる。
「やります。鬼殺隊に入りたいです」
「分かった。決めたからには後戻りは出来ない。覚悟はできてるか?」
「はい…!」
こんなところで突っ立って、憎悪だけを募らせたって仕方がない。
やると決めたからには、やるしか無いんだ。
絶対…絶対に……今夜鬼舞辻を殺す!