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◻︎不穏な気配



なんだかおかしい。

いくら私が鈍感でも、夫の亮一の様子がいつもと違うのは、わかる。


「ねぇ、仕事で何かあったの?」


仕事に出かける亮一に問いかけた。

玄関で靴を履き、スーパーの制服の上着をひっかけてドアを開けるところで振り返る。


「ん?なんで?何もないよ」

「そう?最近、なんだかよく考え事してるみたいだから」

「ちょっと、疲れてるのかな?女が多い職場は色々あるからね。じゃ、行ってくる」


バタンとドアを閉めて出て行った。


私も女なんだけどな…。

夫は地元密着型のスーパー【マミーズマート】中洲原店の店長だ。

40を少し過ぎての店長昇格は、早めの出世だとみんなに言われた。


パートもアルバイトも女性ばかりの職場で、女同士のいざこざもあの柔和な対応で上手く丸めこめる手腕を認められたからだ、との噂もあった。

柔和といえば聞こえがいいけど、優柔不断ではっきりとしたことが言えないのは、一家の長としてははなはだ頼りない。


その夫、亮一の様子が近頃なんだかおかしい。

やたらにスマホを気にするし、消音モードにしていつも持ち歩いてる。

仕事柄、いろんな連絡がくることは前から変わらない。

でも、それ以上になにか、こう…気になることがあるようだった。


優柔不断のうえに、隠し事が下手な夫。

なにか、おかしなことになってなければいいけど。


私は朝の日課の、マルの散歩に出かけることにした。

マルは子供がいない我が家の長男、ハスキー犬の男の子だ。


「さ、行くよ、マル!」


リードをつけて、エチケットバッグを持って外に出た。

雨が降り出しそうな空模様だ。


「急がないと、降り出すかも?」


小走りで出かけた。


河原を軽く走って、マルの散歩から帰ってきた。

大型犬のマルはまだまだ走りたりないようだけど、50を越えた私にはもうランニングなんて無理だ。


私は夫より一回り年上。

もうとっくに子どもも諦めて、マルと夫と3人で穏やかに暮らしている、いや暮らしていた…この日までは。





「あれ?!」


新興住宅地の真ん中あたりにある我が家。

交差点の角から3軒目。

マルを連れて角を曲がった時、見かけない車が路駐しているのに気づいた。

少し古いシルバーのセダン、ナンバーは隣の県。


停めているのは我が家の対角線のあたりだけど、運転席に乗っている人がじっと我が家を見ているのがわかった。

念のため、マルを連れてわざと我が家の前を通り過ぎて、仲良くしてる友達の家へ向かった。

途中でスマホから、その友達に電話をかける。


「もしもし?おはよう、ねぇ、悪いんだけどいまからちょっと行ってもいい?」

『おはよう、いいけどまだ掃除してないから散らかってるよ』

「いいのいいの、でもマルも一緒なんだけど…」

『マルちゃん?いいに決まってるよ、足拭きも用意しとくね』



我が家を通り過ぎ次の交差点を左に曲がって、アーチ状の門を入る。

多分、この家のベランダからならあの車が見える。


「おはよう!突然ごめんねー」

「いいよ、上がって!朝からなんて珍しいじゃん?」

「お邪魔しまーす」

「やっと朝の戦争が終わって片付けるとこ。いらないものどけて適当に座ってて。コーヒーでいい?あ、マルちゃんの足拭きはこれね」


犬柄のスポーツタオルは、マルがこの家に入る時に足を拭くための専用にしてもらってる。


「ありがとう、コーヒー?よければ私淹れるから、片付けしてて」


リビングに散らかったテストの解答用紙や、雑誌をよけて場所を作る。


「あいたっ!もうっこんなとこにシャーペン落としてるしっ。ごめん、じゃあそうしてくれる?場所わかるよね?」


了解、と立ち上がった。


「マルはここでおとなしくしててね」


掃除機を持ってせかせか歩いてる彼女はこの家の主婦、伊藤聡美、年齢は確か48歳だったかな?

中学1年生をかしらに、小学3年生、小学2年生の男の子3人のお母さんだ。


私はコーヒーをセットして、聡美に電話をかけた。


『え?なになに、家にいるのに電話なんて』

「ごめん!ね、ちょっと、二階のベランダから、うちの方向を見てくれない?玄関の反対側にシルバーの車、とまってない?」

『ちょっと待ってて、洗濯物持って上がるとこだから』


パタパタとスリッパの音。

ガラガラとサッシ窓が開いて、聡美がベランダへ出た音がした。


『あー、いるね。でも、この団地の人じゃなさそう、顔はハッキリ見えないけど』

「ナンバーは見える?」

『わかった、ちょい待ち!』


ぴろん🎶と音がして、写真が送られてきた。


『めいっぱい拡大してそれがやっと。ナンバーは読めるけど顔はわからないね。でも…』

「でも?」

『おそらく、冬美さんちを見てる気がする…』

「やっぱり…」


コポコポの音が聞こえなくなって、コーヒーが入った。

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