更新が遅くなってしまってすみません。
9話目もよろしくお願いします!
スタート!
脱衣所には、湯気がほんのり漂っていた。
湯上がりの湿った空気の中で、髪をタオルで拭きながらシャツに腕を通すレトルト。
キヨは何気ないふりで目をそらそうとするけど、視線が勝手に吸い寄せられる。
肩越しに見える白い首筋、細い背中――
湯気に包まれたその輪郭が、妙にやわらかくて、キヨは目が離せずにいた。
レトルトは、髪を拭く手を止めて少し首をかしげた。
「……ねぇ、キヨくん」
その声に、キヨの肩がわずかに跳ねる。
『な、なに』
「今……見てたでしょ?」
ゆっくり振り返ったレトルトの目は、笑っているようで、どこか探るような色をしていた。
キヨは言葉に詰まって、
『べ、別に…!』と慌ててタオルを掴む。
でもその仕草がぎこちなくて、余計に赤くなる。
「ふふ、顔、真っ赤だよ?キヨくんのエッチ〜」
と意地悪そうな笑を浮かべてレトルトが一歩近づく。
湯気の中、距離がほんの少し詰まっただけで、
キヨの心臓がまた大きく跳ねた。
キヨの真っ赤になった顔を覗き込んで
レトルトはそっと呟いた。
「……部屋、行こうか」
その頬は湯上がりのせいか、それとも別の熱のせいか――
赤く染まっていた。
キヨは一瞬だけ息を呑み、
それから、ゆっくりとレトルトの手を握った。
『……部屋、どこ?』
自分の声が少し震えているのを、キヨは隠せなかった。
レトルトはキヨの手を引いて
「いちばん奥の部屋だよ」と静かに答える。
廊下に出ると、
二人の足音が妙に響いた。
手の温もりが伝わるたびに、
キヨの心臓はまた速くなる。
ドアが静かに閉まる音がした。
外の世界の音がすべて遠のいて、
残ったのは、2人の息づかいだけ。
言葉はもういらなかった。
目が合った瞬間、互いの気持ちが伝わったから。
近づくほどに、世界がゆっくりと溶けていく。
時間の流れさえも曖昧になって、
ただ相手の存在だけが確かにそこにあった。
キヨはそっとレトルトの頬に手を添えた。
その指先に触れた体温が、静かに心の奥へと染みていく。
レトルトは優しくキヨを見つめた。
それから、ゆっくりとその手に自分の手を重ねた。
言葉は交わさなくても、もう十分だった。
見つめ合う瞳の奥に、
同じ想いが確かに揺れている。
月明かりが、二人の輪郭をやさしく照らす。
静寂の中、レトルトがそっと目を閉じた。
キヨは息を呑み、
そしてその唇に、触れるようなキスを落とした
――この人に、心まで預けてしまいたい。
そんな想いが交わるたび、
外の風が止まり、静寂が優しく包み込む。
やがて灯りが落ちて、
淡い月明かりだけが部屋を照らした。
その中で、2人の影がひとつに重なる。
キヨの首に腕を回し、触れるだけの唇にレトルトは自分から舌を差し入れ舌を絡めた。
その行為に驚き、眼を見張るキヨ。
その行為に驚きつつもキヨはレトルトの柔らかい唇を深く貪った。
逃げる舌に吸い付き、口を閉じることを許さない。
『レトさん…んっ…っふ…すき…』
「……キヨ…くっ。俺も、す…き‥んっ〜ん」
拘束される唇。
荒々しく塞ぐ唇が言葉を吸い込む。
「はぁ‥んっ‥キヨくん、もっ‥と‥んっ」
もっと、もっとと求めてしまうキヨの唇。
首にしがみつき、立っているのが辛くなる程、快楽へ導かれていく。
高揚する頬、火照る首筋に何度も唇が触れて漏れる声。
『レトさん、エロすぎだって。俺、もう我慢出来ない…』
キヨはすっとレトルトを抱き上げた。
体が自然にベッドへ運ばれる間、レトルトの心臓が跳ねるのがわかる。
「……キヨくん、重くない?」
思わず小さな声が漏れる。
『全然。レトさん、軽いなぁ』
キヨはふざけた顔で答えたが、肩越しにレトルトの視線を感じて、胸が少し熱くなる。
レトルトはキヨの首に両手を回し 恥ずかしそうに顔を赤く染めながらも、安心して体を預けた。
キヨはそっとレトルトをベッドに降ろして
レトルトのおでこに、自分のおでこを重ねた。
息がかかる距離に、二人の心臓が同じリズムで跳ねるのがわかる。
『俺の…レトさん』
低く、だけど震える声で呟くキヨ。
レトルトは顔を赤らめながらも、思わず笑みがこぼれる。
「……俺のキヨくん」
小さな声で返したその言葉に、二人の胸がぎゅっと温かくなった。
キヨの声は、静かで少しだけ低く震えていた。
『……優しくするから』
レトルトは少し恥ずかしそうにしながらも、物欲しそうな目で答えた。
「優しいのも好きだけど……激しいくても……大丈夫。キヨくんの好きにして」
その言葉に、キヨの理性がふっと揺らぐ。
さっきまでの穏やかで優しい瞳は、
今や静かに燃え上がる炎のように熱を帯びていた。
胸の奥で何かが跳ね、心臓が痛いほど早鐘を打つ。
レトルトを見つめる視線に、
自分でも止められない衝動のようなものが宿っているのを感じた。
独占欲を隠せないキヨの瞳に、
レトルトは思わず目が離せなくなった。
胸の奥が熱くなり、体の隅々までじんわりと火照るような感覚。
これから二人で過ごす時間を想像するだけで、
心臓が早鐘のように打つ。
「……キヨくん……」
思わず漏れる小さな声も、緊張と期待に震えていた。
キヨの視線は、ただ見つめるだけでなく、
全てを包み込むような強さを持っていた。
その熱に、レトルトは身をゆだねたくなるような衝動を覚える。
二人だけの静かな夜。
月明かりに照らされた部屋の中で、
感情と呼吸が絡み合い、時間がゆっくりと溶けていくようだった。
続く
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