コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
またある日、鈴子の秘書オフィスに受付嬢がやってきた
「主任、第二秘書の希望者達が面接に来ています、今日は整理番号20~25番までです」
「一人ずつ中に入れてちょうだい」
鈴子の仕事がどんどん増えて手一杯になった頃、アシスタントの募集を出すと、女性社員は我先にと差上階の彼女のオフィスに集まった、今まで20人ほど鈴子は面接したけど適任者はいなかった、彼女の求めているのは業務処理能力の早さでも、語学力でもなく、いかに自分に忠実かだった
そして鈴子は女性社員だけではなく、男性社員にも募集を出した、そこで現れたのが鈴子の古巣「食品開発部」から来た「榊原」だった、入社二年目の彼は二十代で、明るく、シュークリームの様なパーマ頭をしていた
彼は若くてして会長ブレーンになった鈴子を憧れの目で見つめて、尊敬が態度に表れていた、鈴子は経歴書に目を通した、彼は大阪の有名大学の経済学部卒業のなかなかの経歴だった
今まで秘書は同性が良いと思っていたが・・・組織は生き物だ、日々移り変わる会社の状況把握は難しく、それでも最重要に考えなければいけない事だ
そして男性幹部連は連帯感が強く、女を仲間外れにする、鈴子は男性の部下を作る事で、何か良い情報源が手に入るかもしれないと榊原に期待した
「秘書業務に興味がおありの様ですね」
「ハイ!主任!でも主任のような立派な方に仕えた事はありません、正直に申し上げまして、無給でもいいから仕事を教えていただきたいぐらいです」
鈴子は榊原をじっと観察した、彼からは重役達に無い、まだ「無垢」な瞳があった、今から仕込めば5年後、10年後に化けるかもしれない、鈴子はにっこりした
「そこまでかいかぶらないで下さい、では、あなたの経歴を買って、当面試用と言う事で私と一緒にやってみようではありませんか」
「あっ!ありがとうございます」
「それでは契約書にサインしてください、この最上階フロア、秘書フロアで起きる出来事は全てトップ・シークレットです、決して外で誰にも漏らさない事、会社内のことは例えランチメニューでもSNSなどで他言しない事、それが契約の主旨です、守れますね?」
「ハイ!もちろんです!」
ビシッと榊原が背筋を伸ばして言う
「それでは、カウンターの受付嬢の花田さんがあなたの仕事場へ案内します、明日からはここへ出社してください」