「リョウ」
「うん」
「俺はリョウの味噌汁が好き」
「うん」
「初めての料理を俺のために作ってくれるリョウも好き」
「…うん」
「リョウの味噌汁は大好きで大好物だが、俺のために…俺と一緒に食うために一生懸命考えて作ってくれる料理も好き」
「うん」
「もし今日のスペアリブが焦げて硬くなっていても、これに挑戦しようと思って準備してくれたことがまずご馳走。すげぇ嬉しい」
「うん」
「だから、味噌汁を毎日作ってと言っているんじゃない。リョウが俺と食べたいと思って作ってくれる料理がいい。それが尊いんだ」
「…うん…ありがとう」
「わかった?」
「うん」
「だから?」
「…スープを作ってみようと思っている…その時に味噌汁はいらないね」
「そうだな。どんなスープか楽しみだ」
すっきりした表情のリョウの頬を少し撫でて言うと
「肉団子入りのスープ。野菜とお肉が食べられていいかなって…これから寒くなるから、颯ちゃんが外から帰って来たとき肉団子入りのボリュームのある温かいスープを食べて欲しいなって思ったの」
彼女は照れた瞳をくるくる動かしながら…またその言葉が俺を煽る。
「ほら、やっぱりリョウの言葉は俺のことを愛してるって意味だろ?そのスープもうまいに決まってるよな」
さらに照れたリョウは、何もついていない指をティッシュで拭き始める。
可愛い過ぎ。
朝から役所で婚姻届を提出し、この前の定休日に決めておいた結婚指輪を取りに行ったあと、店からレンタル自転車の点検へと出た忙しさを一瞬で吹き飛ばす可愛さは罪だ。
「忠志くんに電話してみようか?」
テーブルの下でギンギンになったモノにさりげなく触れてから理性を総動員し、食べ終えたリョウに言う。
俺の親は今日の入籍を知っている。
リョウの親に伝えなくてはならないが、あちらの状況把握のためには忠志くんにまず聞くのがいいだろう。
「そうだね。おめでとうも言いたいから」
食べ終えた食器をとりあえず運ぶとリョウはチラッと時計を見てからスマホをタップした。
コメント
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あらっ🤭 ″そうちゃん″も食べたいの? あのね、まだダメみたい。もうちょっとしたらまた元気よく出てきてみてくれる?