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この日、彼女は、憂いを帯びた表情を見せる事が多い、と気付いた豪。


イタリアンレストランで食事をしている際、奈美に視線を向けると、虚ろな瞳を映しながら、黙ったままパスタを口に運んでいる。


ベイエリアへドライブに行く約束をしても、どこか上の空だった。


(その時には、俺の彼女になってくれたら……。それが無理ならば、ベイエリアで彼女に想いを伝えるのもいいかもしれないな……)


淡い期待と妄想を彼は胸に抱くが、彼女は元気がない感じに見える。

時々、奈美に声を掛けると、考え事をしていたのか、ハッと顔を上げ、慌てて笑みを作った。


「豪さん、ごちそうさまでした」


少し気まずい雰囲気の中、ディナータイムに入る前に、豪は会計を済ませると、彼女がお礼を言う。


レストランを後にし、二人は車に乗り込んだ。




道は渋滞し、東京に入るまで二時間以上掛かった。


健全なデートの後は、オトナのデートタイム。


これから奈美をトロトロにさせると思うと、豪の背中がゾクゾクする。

「今日はこの後、どうする? 行くだろ?」


彼はステアリングを握りながら、前方を見やる。


「もちろんです」


豪はニヤリと笑ったが、彼女の表情が冴えないように感じた。


(今日の奈美…………どうしたっていうんだ……?)


どことなく落ち込んでいる彼女が心配ではあるが、豪は町田駅周辺のラブホ街へ向けて車を走らせる。


その中の一角にある、外観が古めのラブホに入った。


ここのラブホは、一度、奈美と出会う前に別れた元カノと来た事がある。


事前にリサーチしたのか、元カノに連れてって、とお願いされた。


何年か前にリニューアルし、内装はシティホテルと変わらない、と言っていいほどの落ち着いた雰囲気。


シンプルで高級感のあるインテリアに、海外有名メーカーのダブルベッド。


今、豪は恋人ではないが好きな女、奈美と来ている。


だが、ここに来ても、彼女はまだ陰鬱な表情を、見え隠れさせていた。

ただ、それだけの関係……

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