テラーノベル
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――熱に浮かぶ紅、氷は騒がしい――夜。
柱屋敷の一室。
雪紅:
「…………」
布団の中で、雪紅は小さく息を吐いた。
身体が、熱い。
頭がぼんやりして、呼吸が乱れる。
雪紅:
「……最悪」
こんな日に限って、任務明けの疲れが一気に出たらしい。
――コンコン。
雪紅:
「……入るな」
障子の向こう。
童磨:
「え、今の声、いつもより可愛くなかった?」
雪紅:
「帰れ……」
童磨:
「それは無理だねぇ」
――スッ。
普通に入ってきた。
雪紅:
「……何でいる」
童磨:
「隊士がさぁ、“紅柱が倒れた”って慌ててたから」
童磨は布団のそばにしゃがみ、雪紅の顔を覗き込む。
童磨:
「うわ、顔真っ赤」
雪紅:
「見るな……」
童磨:
「熱あるねぇ。触っていい?」
雪紅:
「よくない……」
そう言いながらも、抵抗する力は弱い。
童磨の手が、そっと額に触れる。
童磨:
「……結構高いよ」
雪紅:
「だから……来るなって……」
童磨:
「嫌だなぁ。こんな時まで嫌われるの?」
雪紅:
「……嫌い……」
声が、かすれていた。
童磨は一瞬、何も言わなかった。
それから立ち上がり、湯呑みと濡れ布を持って戻ってくる。
童磨:
「はい、飲んで」
雪紅:
「……自分で……」
童磨:
「今は患者さんでしょ」
雪紅:
「……柱……」
童磨:
「今は“雪紅”」
少しだけ、声が低かった。
雪紅は渋々、差し出された湯呑みに口をつける。
喉を通る温かさに、無意識に息が緩んだ。
雪紅:
「……」
童磨:
「ねぇ」
雪紅:
「……何」
童磨:
「君が弱ってるの、俺は嫌いだなぁ」
雪紅:
「……なら……帰れ……」
童磨:
「それとこれとは別」
濡れ布を額に乗せられる。
雪紅:
「……冷たい……」
童磨:
「氷の呼吸の使い手だからねぇ」
雪紅:
「……自慢するな……」
童磨:
「ふふ」
しばらく、静かな時間が流れる。
雪紅:
「……あんた……」
童磨:
「ん?」
雪紅:
「……うるさいのに……
こういう時だけ……静かだな……」
童磨:
「失礼だなぁ。俺、空気読むよ?」
雪紅:
「……嘘……」
童磨:
「でもさ」
少し、間を置いて。
童磨:
「君がいなくなったら、俺、つまらないよ」
雪紅:
「……知らない……」
雪紅の瞼が、ゆっくり閉じる。
童磨:
「おやすみ、雪紅」
その声は、いつもよりずっと小さかった。
氷の柱は、紅い柱の眠りを邪魔しないよう、
夜が明けるまでそこにいた。