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そんな聖バストロ学院では、いつもと同じ様に若い魔術師見習いの子供達が眠い目を擦りながら登院し、屋外の広場では獣奴(じゅうど)候補の小ぶりな魔獣達が可愛らしい雄叫びを上げ続け、指導者の成竜が現れるまでの僅(わず)かな時間も無駄にしない、そう言うかの様に大空を飛翔する稚竜達の翼がはためかされているのであった。
獣奴が集まっている広場で教師のデスマン、カゲト(クロトの双子の弟)が言う。
『えー、今日は皆に新しく生徒になった獣奴を紹介しよう、さあ、出て来なさい』
ザワッ
同じ頃、好き勝手に空を飛んでいた竜の子供達に教師の竜、緑色の長い体をくねらせた巨大な龍、エンペラ先生が大きな声で長い髭を震わせながら告げる。
『早く集まれっ! 今日は新しい仲間、君達の友達がいらっしゃるのだぞっ! 全くっ! ほらほらっ、我の元にっ! 早くするのだっ!』
ザワザワッ! グガァーグガァー!
時を同じくして魔術師達の教室でも学院長であり、現鬼王(きおう)であるズィナミ・ヴァーズが編入生を紹介していた。
「皆に紹介しよう、彼女の名はラマス、かの美しき魔術師フランチェスカの孫弟子に当たる名門の子弟だぞっ! 君らにとっても彼女から学ぶ事が多いと思う! 仲良く、積極的に交友を持って欲しい! なはは、以上であるっ!」
ザワザワザワァッ!
編入生が有名な魔術師に関わる縁者と聞いて、俄かに色めき立つ子供たちの最後尾で、腕を組んで見守る様に立っていた青年は小さな声で呟きを漏らす。
「フランチェスカ? そっか…… セスカの、弟子の弟子、か……」 ボソッ
朝のこの時間だけ教室に居る、既に十七歳になった彼の言葉を気にかける子供達など居なかったからこそ、この呟きは子供達の眼前に立っていた幼い少女の鋭い聴覚だけに届いたのである。
少女、ラマスはニッコリとした笑みを青年に返し、その後でざわめき続ける子供達に対し深い礼と共に大きな声で宣言をしたのである。
「よろしくお願いします皆さん! 西の魔術師、フランチェスカの孫弟子、ラマスといいます、この学園に来たのは私の師匠の言い付けですが、お世話になる限りは必死に学んで帰りたいと思います! 切磋琢磨の機会と思っていますので、どうか、この田舎者をお導き下さいませっ! お兄様、お姉様♪」
オレンジ色の派手な髪を短く切りそろえた、人懐っこいラマスの明るい挨拶に色めき立った教室の後部から、一人静かに立ち去ろうとした青年の背後から、大きな雌獅子が声を掛ける。
『あらもう行くの? 授業も聞いていけば良いのにぃ?』
青年は振り返って笑顔を浮かべて答える。
「今日は忙しいんですよキャス・パリーグ…… 子供達の食料調達に薪集め…… 授業は又、時間が有る時に、って事で、なはは」
『ふふ、貴方はいつも忙しいのねぇ…… まあ、いいわ、気を付けてね、レイブ』
「はいっ、気を付けて行って来ますっ!」
レイブ・バーミリオン、十七歳の秋であった。