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この日、学院に帰ってきたレイブは疲労困憊であった。
既に日はトップリと暮れ始めている。
朝早くから食料集めに薪拾い、途中で厨房から依頼された岩塩の供給(大至急)、クタクタになった帰り際に無責任な感じで頼まれてしまった近くの集落三箇所への粉薬の配達を終え、珍しく両の肩をがっくりと落として帰還を果たしてきたのだが……
「一日忙しく過ごしておられたようですね、お疲れ様でした、おかえりなさいませ」
珍しい事にレイブを労う声と共にオレンジ色のショートヘアの下で弾ける笑顔が迎えてくれたのである。
もう七年近く、この学園内で特に役目が決められていない仕事の一切、判り易く言えば、誰もが進んでやりたがろうとしない作業を全部請け負っている、雑用係に過ぎないレイブが誰かに声を掛けられること自体、とても珍しい事なのだ。
慮外(りょがい)の事に多少戸惑いながらも、レイブは目の前の少女に対して返事を返す。
「あ、ああ、君はセスカの孫弟子の…… 確か、ナマスさん、だったよね?」
「ラマスです」
「あ、そうか、ラマスさん、か…… 労いの言葉をありがとう、嬉しかったよ、それじゃ……」
そう答えると再び頭(こうべ)を垂れて、疲れきった体を引き摺る様に彼女の横を通り過ぎたレイブにラマスは声を重ねる。
「お、お待ち下さい! ハタンガのレイブ様なんですよね? 北の魔術師バストロ様の唯一のお弟子さんの…… もう少しだけ私の話をお聞き下さいませんか? お願いします」
「え、まあ確かに俺はレイブだし、バストロ師匠の弟子だけど…… そんな事はこの学院なら誰でも知っている事だよ? 話? ってぇ、あらたまっちゃってぇ、一体、何なんだい?」
怪訝そうな表情を浮かべて聞き返したレイブに、オレンジ髪の少女、ラマスは人懐っこい笑顔を更に深い物にしながら明るい声で答える。
満面の笑顔とは裏腹に、胸の前で合わせた両手に合わせる様に、上半身を深く折り曲げて最敬礼をしながらの言葉はこうであった。
「レイブ叔父様、師姪(しめい)、ラマス、いいえラマシュトゥがご挨拶させて頂きます! 私の師匠、シパイに言いつかりまして、叔父様にお会いする為に、この『魔術師修練所』にやって参りました! どうぞ、ラマスとお呼びくださいませっ♪」
「えっ、シパイ? 君ってシパイの弟子なの? あぁ、でもぉ、そうか、セスカの孫弟子なら、確かにそうなるのかぁ、な?」
「はいっ! 叔父様♪」
「お、おう」