鋼谷が深い絶望の中で日々を過ごしている間、本社から緊急の要請が舞い込んだ。鋼谷は心の準備も整わないまま、重い体を引きずって指令を受けるために向かう。
「本社が襲撃された…?」
その知らせは、まるで鋼谷の心を抉るようだった。報告によれば、霊一が本社に直接襲撃をかけ、数多くの異能者たちが倒されているという。鋼谷は呆然としながら、霊一の強大な力がまざまざと脳裏に蘇った。自分がかつて完敗したその相手が、いまや仲間たちを脅かしているのだ。
「鋼谷、君にしかできない任務だ」
上司の言葉に、鋼谷は顔をゆっくりと上げる。再び彼に戦いを命じられることに、心のどこかで恐れと疑念が浮かんでいた。それでも、逃げ出すこともできず、鋼谷は戦場に戻る覚悟を決める。
「…分かりました」
その声には決意と共に、わずかな迷いも混じっていた。だが、霊一が本社を襲撃した以上、今度こそ彼を食い止めなければ、仲間たちの安全が脅かされる。
鋼谷が本社に到着すると、そこにはまさに惨劇の現場が広がっていた。瓦礫の山と血に染まった廊下を歩きながら、彼は自分がどれほど無力かを痛感せざるを得なかった。しかし、その中でふと見えた影が、彼の心を冷たくする。
「…霊一」
そこに立っていたのは、冷酷な笑みを浮かべた霊一だった。彼の姿は、まるで鋼谷の心の深奥をも見透かしているかのようだった。
「鋼谷、まだ生きてたか。今回もまた無様に倒されに来たのか?」
霊一の冷笑に、鋼谷は震える拳を握りしめる。敗北の記憶が蘇り、再び無力さが彼を襲ったが、それでも彼は一歩を踏み出す。心の奥底で湧き上がる怒りと、仲間を守りたいという強い意志が、彼を突き動かしていた。
「今度は…負けない」
鋼谷の決意のこもった言葉と共に、ついに二人の激しい戦いが始まろうとしていた。霊一との最終決戦が、この瞬間に幕を開けたのだ
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