テラーノベル
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展望デッキの出入り口から、サングラスを掛けた全身黒づくめの集団が、こちらに近付いてくる。
「まさか…………送迎役の連中……」
異様な雰囲気に一変したのを察した優子が、それとなく男を見上げると、黒い壁のように迫り来る集団を見た拓人が、表情を怯ませた。
あっという間に、黒い波に取り囲まれた二人。
「…………みぃ〜つけた……」
送迎役のリーダーの男が、口角の片側を吊り上げると、ドスっと鈍い音がした瞬間、拓人が、表情を歪めながら、カッと目を見開いた。
「!!」
拓人の面差しを見た優子の背中が、恐怖で凍りつき、声を出したくても出せない。
彼女が、恐るおそる視線を下に向けていくと、拓人の胸に銀色に光る刃物らしき物がめり込み、鮮血が筋を作りながら滴っている。
目を丸くさせたまま硬直しながらも、拓人が不自然な動きで、辿々しく優子に顔を向けた。
「……ゆっ…………ゆ……うっ…………くぉぁっ……っ…………あぁっ……うぅっ…………ぐふっ……」
グシャリと表情を歪めながらも、拓人は、優子に笑みを見せたような気がしたけど、スローモーションのように、男の身体が崩れ落ちた。
出会ってから初めて、拓人に名前を呼ばれた優子が、我に返ってハッとする。
「た……たっ…………拓人ぉおぉおおおぉっ!!!!」
「……この女も仲間か?」
優子が声を張り上げて男の名前を呼ぶと、別の黒づくめの男に密着された矢先、鋭い痛みが腰周りに直撃する。
「きゃぁあぁあぁぁっ!!!!」
ジワリと這うような、焼け爛れた痛みに、優子が地面に倒れながら悲鳴を上げると、展望デッキにいた人たちが、こちらに駆け寄ってくる姿が朧気に見える。
バタバタと足音が遠ざかっていくのは、恐らく黒い連中が、その場から逃げたのだろう。
時折混じって聞こえてくる、カメラのシャッター音は、航空写真を撮りに来ているカメラマンが、証拠を残すために、送迎役の五人組を撮ったのだろうか?
『誰か!! 警察に通報!! 救急車を!!』
『二人を刺したのは、あの黒づくめの集団だ!!』
『大丈夫ですか!? しっかり!!』
身体を揺さぶられながらも、優子の耳に残る音は徐々に消えていき、視界は漆黒に覆われた奈落へ吸い込まれた。
コメント
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優子どうなるの?…