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ウサギ肉は抵抗なく一口大となり、調理される。
値段の割によく切れる包丁だ。
それに包丁や鍋などを扱う金物屋は他にもあるが、武具の類を取り扱うのはあの店だけだ。それらの性能も良かったりするのだろうか。
出来上がったのは男飯とでも言うところか、ウサギ肉のどんぶり飯だ。
咀嚼しながら俺は先ほどの出来事を思い出す。
俺を変態呼ばわりした失礼な少女は、いつのまにか立ち上がり背後にまわった店員に首をキメられてぶら下がっていた。
無駄のない動作でそのまま玄関から外にいったと思ったら、店員だけが帰ってきた。少女の連れのところに転がしてきたそうだ。
そのあとはとりあえず目についた包丁を買って帰ってきて今があるが、誤解されたままというのは我慢ならん。今度見かけたらきちんと話そう。
あれから3日。
昨日の鍛錬も変わらず俺の筋肉を喜ばせてくれている。
もはやどんなヤツにも負ける気がしない。
帰り道の市場で鶏肉を買う。そういえばおととい辺りに珍しいナナイロオドリが3羽、ギルドから流れてきていた。今日はイノシシが3頭。どちらも同じエルフによるものだそうだ。
鍛冶屋を外から覗くと、先日の金髪の少女がまた店員を捕まえて話をしているところだ。
カランカランと鐘を鳴らして扉をくぐる。
少女と目が合う。少女が口を開こうとしたところを、またいつのまにか背後に回ってその手でふさぐ。
そんな姿勢のまま店員を見上げてモゴモゴ言っているが、その姿はなぜか楽しそうだ。
「お主、なかなかに鍛えられた身体をしているな」
唐突に横から声をかけられて振り向くとそこには、2mを超えるであろう獅子の獣人が見下ろしていた。
獣人の中でも獣の特徴が濃く出ているタイプだ。明るい店内で金色の瞳に縦長の瞳孔はネコ科のそれだろう。鼻と口は人間に近いが、口からのぞいている牙は噛みつかれたらひとたまりもないかもしれない。
浅黒い肌に薄い眉、獅子の髭のようなものもあり、髪の毛はそれこそ獅子のたてがみを人間サイズにあわせたようなもので、その太い首を隠すくらいにはある。
僧帽筋は高く盛り上がり、パッドでも入れたような三角筋に丸太のような上腕。腕組みをしたその先の手まで分厚い筋肉を纏っており、全体的に明るい茶色である。獣人の中でも獣の特徴が色濃く出ているタイプは身体能力が高い。それでも俺の筋肉の方がでかいがな。
そんな野性の筋肉獣人の服装は何故か白のシャツに紺色のオーバーオールと茶色いブーツだ。服のセンスなどは人それぞれだが、あんなパツンパツンのオーバーオールは見たことがない。
しかしこの肉体美が分かるとは、この獣人は見どころがあるな。
「ふっ、この街最強の男ジョイスとは俺のことだ」
言ってやった。鍛錬場でさえ俺に敵うものは居ない。いつだって羨望の眼差しが痛いほどだ。
野生の筋肉獣人は目を細めてみせた。