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大概の人は夢を見る。(実際には誰でも毎日見ているらしいが覚えていないだけらしい)もちろん僕も夢を見る。夢の中では現実にいる人や物、風景など様々な出来事や物事が合わさって夢というものを勝手に作り出す。いわば自分の頭の整理だという。その日もいつもどおりの夜だった。シャワーを浴びて、食事をして、ベッドへ行って本を読む。最近は本をよく読むようになった。特に理由はないけれどなんとなく本を読んでみたいと思い古本屋で安く買った。それもスマホで動画を見てるだけなのは少し嫌だとおもって、趣味でも見つけたいと思ったのかもしれない。それに古本独特の香りが割好きなので気に入っている。三十分ぐらい本を読むと眠くなってきていつも通り眠りにつく。目を瞑ればと近くの大通りでバイクで走り抜ける音が街へ響く。まったく真夜中に迷惑な奴だ。と思う反面自分の好きなことを極められるのは凄いなと少し尊敬のようなものもある。
そんな明日にはとっくに忘れてるであろうことを考えていれば少しずつ意識が遠のいて睡魔が僕を誘う。
「その日僕は夢を見た」
普通の夢とは違って自分が今、夢を見ているのだと自覚することができた。その夢で蕗谷が出てきた。
(現実ですら別に会いたくないのに…)
そこでは蕗谷は手に何かを握りしめているようだった。
よく見るとそれはくまのぬいぐるみキーホルダーだった。少し薄汚れていて長い年月が経っているように見える。元の色が何色かなど分からないぐらい色褪せている。蕗谷はそれを大事にだいじに、決して離さないというように強く握りしめている。その顔はいつもの仏頂面とは違うどこか寂しさを含んだ顔のようにも見えた。
すると目が覚めると直感的に感じたかと思えば意識は徐々に遠のいていく。現実へと引き戻される感覚と同時に蕗谷がどこに立っていたのか曖昧な記憶を遡る
蕗谷はどこに立っていたんだっけか…あぁそうだ。
墓だ、墓の前に立っていた。
なぜ蕗谷は墓の前に立っていたのだろうか。きっとその意味ない。所詮夢の中での出来事であって僕は知る由もないのだから。
目を覚ませば時刻は午前五時半カーテンの隙間からは暖かな日差しが差し込み朝を告げている。いつもより早くに起きてしまったからか、もう少し寝ていれば良かったと思わないこともないが朝の重い足取りでキッチンへと向かう。一人暮らしをしているからには自炊をしなければ生活していけない。毎日コンビニ弁当で済ませられれば楽だが最近はコンビニ弁当ですら手をつけにくい。
朝食を食べ終え洗面台で多少の身だしなみを整える。顔を水で洗う。
今日は厄介な寝癖だったものなので意外と時刻はちょうど良かったかもしれない。さほど変わらないいつも通りのルーティン。ただ嫌に頭に残っているのは夢での蕗谷だった、いつもなら夢なんてすぐに忘れてしまうのに今日はずっと頭に残っていて気持ち悪い。
その後今日も学校は何事もなくいつもと同じように終わった、そのときにはもう、僕はあの夢のことなんて忘れてしまっていた。
帰りに阿多部と佐々木と共に昇降口までいったところで今日やらなきゃいけない課題を教室に忘れてしまったことに気付いた。
「ごめん僕教室に課題忘れたっぽいから取りに行く。先帰ってて!」
「了解また明日な」
僕は教室へと早足で向かう。生徒はもう大体が下校しているか部活に行くので校舎は閑散としていたが最上階からは吹奏楽の演奏だろうか遠くからでもわかるようなきれいな音が響いている。
教室へ入ろうと、少し教室を覗くと先客がいるようだった、もう一回誰なのか確認しようと覗くと蕗谷だった。教卓の前で手にある何かを見ている。その時僕はハッとした、なぜなら蕗谷が手に持っていたのは、夢に出てきたものと全く同じマスコットキーホルダーだったものだから。
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