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ある日、突如として、地上に黒く輝く星々が降り注いだ。
黒き星は獣のような姿を象り、破壊と殺戮の限りを尽くした。
人は散り散りになり、大地は穢され、星の消えた宵の空には闇だけが残った。
その事件を、ある者はこう呼んだ。
「凶星の暴虐」
…辛うじて人類は滅びず、弱々しくながらも文明の幾らかを持って存続していた。
しかしそれでも凶星の獣の脅威は消えず、人々を襲い、挙げ句には幾柱の神やその眷族を手に掛けた。
大御神アマテラスはその惨状を嘆き、凶星を砕くために自ら地上へと降り立った。
星が狂気に犯されていたことを悟れず、果てや姉に危険を冒させてしまったことを悔やむツクヨミ
精一杯の償いとして、遥か昔に地上へと墜とした眷族を遣わせた。
地上にいたが故に狂わなかった狗
その旺盛な食欲を用いて、凶星を砕き星を呑み込みツクヨミの下へ送り、ツクヨミが凶星を浄化し元の星へと戻す。
アマテラスは狗を従え、凶星を浄化し、地上を清め、宵の空を戻し、人々を救済する旅に出た。
しかしなんということか。
狗は餓えを抑えられず、ついにはアマテラスさえも食い殺した。
ツクヨミを怒り狂い、狗の心を奪い、狗に命じた。
「凶星を全て喰らい、人々を導き、消えた天道を元に戻せ。この使命は其方が死しても消えず、逃げることもできず、全て果たすまで其方の心は永久に戻らぬ」
狗は愚純に喰らい続けた。
砕き、喰らい、砕き、喰らい、砕き、喰らい、喰らい、殺し、砕き、喰らい、砕き、砕き、殺し、喰らい、砕き、殺し、砕き、喰らい、殺し、砕き、殺し、殺し、喰らい、殺し、喰らい、砕き、殺し、砕き、喰らい、殺し、殺し、殺し、砕き、喰らい、喰らい殺し砕き砕き殺し喰らい殺し殺し砕き砕き殺し喰らい殺し殺し砕き殺し殺し殺し殺し殺し殺し殺し殺し殺し殺し殺し殺し殺し殺し殺し殺し殺し殺し
狗の心は帰らなかった。
狗の餓えは満たされなかった。
狗は人を導くことを知らず、狗は命の生き返らせ方を知らず。
狗は人を象った。
しかしそれは狗が人の皮を被っただけでしかなく、鈍い人間は狗が誤って殺し、鋭い人間は狗を忌避した。
狗はあまりにも幼かった。
育つことなく、老いることなく。
ただ砕き喰らい殺す以外に何も知らなかった。
ただ一人、そんな狗を嘆く慈悲深き者がいた。
日のように明るい神の鶏が、狗の前に現れた。
「鏡を見つけよ。そこに天道はいる」
狗は歩き始めた。
果て無く、飽く無き、永劫の旅を始めた。