この日翔太に会えたのは久しぶりだった。
スケジュールが詰まっていて、ほとんど眠れていないような状態だったらしい。頬もこけていて、身体も軽かった。ごめん、と断って、ベッドに寝かせた。
💙「帰る」
❤️「動けるようになったらタクシーで送って行くから。とりあえず、休みな」
あんな話をした後で気まずいだろうが、このまま帰すわけにはいかない。
翔太の熱は39度もあった。夜間救急に運ぶことも考えたが、それは翔太が嫌がった。明日も早くはないが午前中から仕事があるので休みたくないという。
目を閉じて唸っている翔太を目の前にして、俺は熱い身体を冷やしてやることしかできなかった。荒かった呼吸が徐々に静かになり、翔太の呼吸は安らかなものに変わっていった。そのうち眠ってしまったので、俺はソファに横になった。
隣りで眠るわけにはいかない。
ほとんど眠ることができずに、朝を迎えた。 寝室へ行くと、翔太はまだ眠っていた。 顔色もだいぶいい。スマホが鳴った。
💚『おはよ~』
阿部だった。
言いたいことや聞きたいことが山ほどあるが、とりあえず既読だけして、スルーする。後でちゃんと話をしないといけない。何も決められない自分自身に腹が立つ。
するとまたスマホが鳴った。
💚『翔太、昨日怒ってた?』
❤️「なっ…」
思わず声が出る。
一体どういうことだろう。
俺は寝室を出て、阿部に電話を掛けた。
❤️「もしもし」
💚「おはよー。舘さん、怒ってる?」
❤️「いや」
怒るのは筋違いだと思う。でも阿部のこの妙に軽い感じが気になった。まるで今日天気悪い?みたいな言い方で聞いてきたので癪に障った。
❤️「阿部、どういうこと?」
💚「んー」
❤️「ちゃんと説明して」
💚「翔太に言いたくなって、言っちゃったの。舘さんって、案外エッチ下手くそだよねって」
❤️「は?」
突然の屈辱的な告白と、意味の分からない挑発に心が乱れた。
感じていたはずなのに。と、見当違いな反論が頭に浮かぶ。 自分の顔が真っ赤になっているのがわかる。なんでこんなことを朝っぱらから言われなくちゃならないんだ。
💚「そうしたら翔太が急に怒り出すんだもん、俺、びっくりしちゃった」
❤️「………嘘だよな」
💚「本当だよ?」
❤️「………」
💚「そしたら翔太がいきなりマネージャーさんに入り時間の確認を始めて、今から舘さん問い質すって怒って別れたからさ、そっち行ったんだろうなって思って」
確かに会う約束を事前にしていたわけでもないのに、翔太が家に来るなんて珍しいなとは思ったのだ。俺はただ会いたくて来てくれたのだとばかり思っていた。とんだおめでたい勘違いだ。
それにしても、今俺が話しているこの相手は本当に阿部なのか?
阿部ってこんなやつなのか?
胸に不気味な感情が湧いてきている。うすら寒くなるような阿部の言い草を不審に思う。
❤️「阿部、一体どういうつもり?」
💚「……あ。呼ばれちゃった。もう戻らないと。翔太と別れたら、連絡ちょうだいね。じゃ」
阿部は言いたいことだけ言うと、一方的に電話を切った。
仕事中だったようだ。
❤️「なんなんだよ」
疲労感と、不信感と、それでもまだ阿部を信じたい気持ちと。
あらゆる感情がごちゃごちゃになって、頭が混乱したまま寝室へ戻る。
翔太の白く安らかな寝顔だけが俺の心を落ち着かせてくれていた。
コメント
7件
ブラックすぎるあべちゃんじゃん😂
あ、阿部ちゃん?!カタ:(ˊ◦ω◦ˋ):カタ舘さんに何するの?