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#独占欲
――せっかく死ぬなら、何か遺して死にたいよねえ。
それが、あいつ――一ノ瀬加奈の口癖だった。
あいつは常日頃から、何かを見るたびに、「あれで死ねそうだねえ」と言う。
ある時は、大道芸人が口内に突っ込んでいた縦に長い風船。またある日は、冷蔵庫の中に入りっぱなしだったカチコチのスプーン。
死ねそうだねえ。死ねそうだねえ。というたびに僕がツッコむと、あいつは毎回楽しそうに笑いながらお腹を抱えていた。
そんな彼女の口癖であった、あの言葉。
実際のところ、僕はそれを世迷言と捉えていた。その理由は、人が死ぬタイミングなんて、自殺以外では少しも分からない、触れようもない概念だから。という至極真っ当なものであると同時に、彼女が死を目論むことなんてないと油断していたがためだった。
この持論は、あいつにも話したことがある。
あいつはそれを聞くと「それもそっか」と同意の意を表すと同時に、少し不満そうな顔で笑っていた。
…そして、あいつは死んだ。死を選んだ理由は、親からの虐待。学校でのいじめ等々。死に方はいかにもオーソドックスであり、飛び降りだった。
なぜ分かるのか。だって? …彼女が僕の前で飛び降りたからだ。まるで見せつけるかのように。
それからすぐに彼女の両親は警察によってその身柄を確保され、いじめっ子どもはその悪逆無道ないじめを原因に少年院へとぶち込まれた。
そして僕は…児童相談所を通じて施設へと放り込まれた。
何かを遺して死にたい。その言葉の意味を、僕はようやくその時になって理解した。
彼女は、自らの死でもって僕の身の安全を遺したのだ。
なんという皮肉だ。僕はそれが、最高に笑える冗談にしか見えなかった。
コメント
1件
読み終えたわ……「せっかく死ぬなら、何か遺して死にたいよねえ」って台詞が、最後の「僕の身の安全を遺した」って回収で全部違う意味になるの、残酷すぎてやばい。飛び降りを見せつけるようにって描写が、あいつの不満そうな笑顔と重なって胸が詰まった。第1話でここまで持ってかれると思わなかった。続きが気になる……!