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えれめんたる
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「……ねえ、今、笑った?」
深夜
静まり返った部屋で、私はバッグの中に問いかけた。
人形の肌は、もう陶器の質感ではない。
指で押すと、人間の皮膚のように柔らかく、生温かい。
そして何より、その「目」だ。
白目の部分に細い血管が浮き出し、私が動くたびに、じろりと視線を追ってくる。
(吸い込みすぎたとか……?)
あの日、交通事故の現場で立ち尽くしていた私の耳に、人形が「ごちそうさま」と囁いた気がした。
それ以来、私の周りでは、私が願わなくても勝手に不幸が連鎖し始めている。
コンビニの店員が私の前で倒れ、道ですれ違っただけの人が階段から落ちる。
そのたびに、私の元には
「身に覚えのない臨時収入」や「欲しかったブランド品」が届く。
「……やりすぎよ、もういい」
私は少し怖くなって、人形をクローゼットの奥に押し込んだ。
重い扉を閉め、鍵をかける。
その直後だった。
ギィィィ、ガリガリッ……。
クローゼットの内側から、爪で木をひっかくような音が聞こえてきた。
さらに、ボタボタと、何かが滴る音。
「やめて……!」
恐る恐る扉を開けると、そこには信じられない光景があった。
クローゼットの中に掛けていたお気に入りの白いワンピースが
どす黒い「血」のような液体で真っ赤に染まっている。
人形の口元からは、その液体が溢れ出し、真っ赤な泡を吹いていた。
スマホが震える。
SNSの送り主からの通知だ。
『おめでとうございます。配当が溜まりすぎて、人形が“飽和状態”になりました。』
『ここからは、あなたが不幸を呼び込まなくても、勝手に“大きな支払い”が始まります。』
画面を見つめる私の指が震える。
その時、部屋の電気がチカチカと点滅し
背後で「ウフッ」と、幼い子供のような、それでいてひどく枯れた声が響いた。
振り返ると、クローゼットの中にいたはずの人形が
私のベッドの真ん中に座って、真っ赤な目で私を見上げていた。
「……次は、だれ?」
人形の唇が、はっきりと動いた。