テラーノベル
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6話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
そして――
再び、白い封筒が投げ込まれた。
金色の封蝋にあの歪んだバッテンの目。
ギザギザの笑み。
怪盗レトルトからの挑戦状。
指先で封を切る。
中の文字は、まるで楽しげに踊っていた。
キヨは挑戦状を強く握りしめた。
真実を知った。
宝は奪われたものだった。
レトルトは奪う者ではなく、奪われたものを取り戻す者。
――理解してしまった。
それでも。
「……だからといって、
好き勝手にさせるわけにはいかない」
揺らぐ心を、無理やり押し殺す。
自分は探偵だ。
秩序を守る側だ。
そして何より――
あの男を捕まえたい。
仮面の下の真実を暴きたい。
胸の奥で、炎が再び燃え上がる。
その夜。
予告された場所は、鉄壁の警備。
逃げ道はない。
今度こそ終わらせる――そう信じていた。
だが。
闇の中を舞う影。
風のように翻るマント。
警報が鳴り響くより早く、宝は消えた。
「また……っ!」
駆けつけたキヨの前で、
屋上の縁に立つ怪盗が振り返る。
『惜しかったね〜キヨくん。
ふふふ、また逢いに来るからね〜』
楽しそうな、愉悦に満ちた声。
次の瞬間、煙と共に姿が消える。
高く、愉快で、どこか挑発的な声だけが
夜空に響いた。
キヨは拳を握りしめ、空を睨む。
捕まえたい。
止めたい。
知りたい。
レトルトという男のことを。
その後もレトルトは幾度となく予告状を送り、
そして盗み、
高笑いと共に夜へ溶けていった。
キヨは惨敗だった。
どれほど緻密な罠を張ろうと、
どれほど人員を配置しようと、
レトルトはまるで最初からすべてを見透かしているかのように、
軽やかに、楽しげに、すり抜けていく。
警報。混乱。空っぽの展示ケース。
そして最後に聞こえる、あの声。
『またね、キヨくん』
そのたびに、
キヨの拳は震えた。
悔しさで。
怒りで。
――そして、名もつかない高揚で。
勝ちたい。
捕まえたい。
だがそれ以上に。
もっと知りたい。
あの男の真実を。
そんな中、キヨは動き始めた。
現場ではなく、デスクに向かう。
新聞記事。
公式発表。
国家が隠した記録。
消された過去。
世間に流れる“怪盗レトルト”の報道。
その裏側。
そのさらに奥。
《真実》
なぜ宝は狙われるのか。
なぜ返されるのか。
なぜ、あの目はあんなにも燃えているのか。
ページをめくる指は止まらない。
夜が明けても、部屋の灯りは消えなかった。
キヨは知らなかった。
この調査が――
やがて自分自身の「正義」を壊し、
そして怪盗レトルトという存在を
ただの敵ではいられなくすることを。
静かな部屋で、紙の音だけが響く。
嵐の前の、
深く、長い、沈黙だった。
そしてある夜、またキヨはレトルトを追っていた。
しかし、真実を知れば知るほど、
自分が信じてきた“正義”は輪郭を失い始めていた。
本当に悪はレトルトなのか。
本当に守るべきものは国家なのか。
答えはまだ出ない。
それでも足は止まらない。
追うことだけが、今の自分を支えていた。
――その時。
「レトルトを捕まえたぞー!!」
どこからか響いた歓喜の声。
キヨはハッと息を呑み、我に返る。
うそだろ。
まさか――。
警備の人垣を掻き分け、声のする方へ走る。
肩がぶつかり、怒号が飛び交う。
だがキヨの視界には、ただ一点しか映っていなかった。
そこに――
レトルトがいた。
後ろ手に縛られ、
静かに俯いている。
いつも風のように笑い、
蝶のように舞い、
夜を支配していた怪盗。
その姿はあまりにも あまりにも無防備で….。
キヨは息を呑んだ。
胸の奥が、ずきりと痛む。
勝ったはずなのに。
望んでいたはずなのに。
――どうしてだ。
どうして、どうして。
その時、
レトルトがゆっくりと顔を上げた。
そして――
まっすぐにキヨを見つめる、
あの燃えるような瞳。
レトルトは微かに笑った。
『ふふふ……捕まっちゃった』
その声は、なぜか嬉しそうで
夜の喧騒の中で、
確かにキヨだけに届いた。
続く
コメント
4件
まじ助かります…! 相変わらず引き込まれるお話で楽しく拝見させてもらってます!!
いやほんと好きだ…あなたの脳味噌を私の頭の中に入れていいですか??? こういう最高なやつ書けるようになりたい……