テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「しまった!のじゃ!」
ルカは即座に背中から【クリスタルの羽】を展開し、アオイをしっかり抱きかかえて跳躍。
無数の魔法と魔刃が放たれる中、滑るように空を駆け、直撃を避ける。
「ど、どういうこと!?そしてルカ!?なにその羽!」
「黙って掴まっておるのじゃ!」
そのまま壁を突き破り暗闇の外へ__
無理やり展開された翼のせいで衣服が裂け、肩や背中が露出していたが、今は気にしていられなかった。
「追え」
王・アビの冷徹な一声で、天井に待機していた【バットドラゴン】達が一斉に羽ばたき、血を求めるように夜空へと飛び立つ。
飛行可能な吸血鬼兵達も続き、空に黒い群れが生まれた。
一方で、地上に残されたルコサはまったく動じていなかった。
「さて……よくぞ残ったな、人間」
王座にふんぞり返ったまま、アビが冷たく笑む。
「うん、歓迎されてるのがよーく伝わってくる。……この空気、湿っぽくてカビ臭くて、なんだろう……ハロウィン?」
「くだらん」
アビは玉座の肘掛けに指を添え、そこに刻まれた古代紋章に魔力を流す。
「《血魄の咎紋》――開け」
ズンッ……
王の魔力に応じて、玉座の前に禍々しい紅黒の魔法陣が浮かび、そこから液状の闇――《血の弾丸》が大量に生成される。
それは空気を裂いてルコサへと襲いかかった。
「っと、派手に来たねぇ……!」
ルコサは左腕に【光る盾】を展開、飛来する魔血弾をすべて受けきる。
衝撃と魔力の炸裂が響くなか、ひとつも傷を負わない。
「ほう、全て防ぐか……なんだ?その武器は」
「ふふん。これ?【未完成の武器】ってやつ。完成してたら君の部下たち、もう全滅してたかもね?」
右手に光の槍を展開し、ルコサは軽く肩を回す。
「まぁ、ひとまず――一本、お見舞いしとこうか」
ピシッ――
放たれた《光槍》はアビを狙い、一直線に飛翔する!
ドォン!
だが直撃したのは、アビの“かつての”王座。
光の爆風が吹き荒れる中、その姿はまるで最初からそこにいなかったように消えていた。
「__っ!?」
——ズブッ。
鋭い音と共に、ルコサの身体が大きくのけぞった。
「ガ、ハッ……!」
いつの間にか背後にいたアビが、無表情で黒い剣を突き刺していた。
「ど、どうし……て……」
呻くルコサが振り向こうとするその途中、アビは静かに囁いた。
「冥土の土産に教えてやろう。我が魔眼は【スコーピオ】。暗殺の王の前で——同じ時間にいられると思うな」
ルコサの肩が震え、目を見開いたまま力が抜けていく。
「は、はは……神ってやつは……ほんと、いじがわるい」
膝をつき、ゆっくりと前のめりに倒れ込む。その体から、血が静かに流れ広がっていった。
アビは冷めきった目でルコサの亡骸を見下ろし、指を鳴らす。
「この死体は“棄場”へ。魔物にでも食わせておけ」
部下たちがすぐさま動き出す。
「それと、各支部に通達だ」
「『人間が逃げ出した』と——」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!