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ー外が明るい、もう朝なのかな。
こんなに早く起きたのはいつぶりだったかな?久しぶりに散歩でもしてみようかな。
着替えもしたし、戸締りもしたかな。帰り道を忘れないように、メモ帳も持ったし。さぁ、出かけようか。
今日は体が望む通りに歩いて行こう。きっと体は覚えているんだろうな。吐く息が白いくらいに外は冷えているのに、体はぐんぐん進む。
5分ぐらい歩いていると、堤防沿いの並木道に出た。今日は川沿いを歩こうかな。
葉の1つも残っていない木の並ぶ堤防を歩いていると、ちょっとした休憩所が見えてきた。なぜだろう。そこにいる僕と同じぐらいの女性がずっとこちらを見ている。嬉しそうな、物寂しそうな表情で。
休憩所の自販機で缶コーヒーを買って少し体を温める。さっきから隣の女性が話しかけにくそうにチラチラとこちらを見ているのがわかる。
ーいい天気ですね、ここにはよく来るんですか?ー
当たり障りのない言葉をかけると、相手は驚いてこちらを見て、
ー…はい、とある人との思い出の場所で。ここに来れば逢えるような気がして。ー
そう答えて遠くの方を見つめていた。僕は何も言わずに缶コーヒーを一口飲んだ。コーヒーを啜る音と鳥の声だけがその場を流れた。
ー♪〜ー
女性は何かの歌を口ずさんでいる。普段あまり歌は聴かないが、どこか遠くで聴いたことがあるようなメロディだった。