テラーノベル
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夜の電車は、妙に静かだった。
終電に近い時間、車両には私と、もう一人の男しかいない。
男は私の向かいに座り、膝の上に古びた**リュック**を置いていた。
そのリュックが、どうにも気になった。
黒い布のリュック。
ところどころ擦り切れていて、長く使われているのが分かる。
けれど、一番奇妙なのは——
**時々、動くのだ。**
最初は気のせいだと思った。
電車の揺れだろう、と。
だが男は、リュックが揺れるたびに、そっと撫でていた。
「大丈夫、大丈夫……」
小さく、そう囁いている。
私は目をそらした。
関わらない方がいい。そう思ったからだ。
だが次の瞬間。
**ガサッ**
明らかに、内側から何かが動いた。
私は思わず見てしまった。
男も私の視線に気づき、にやりと笑う。
「気になります?」
私は慌てて首を振った。
だが男は楽しそうに続けた。
「大丈夫ですよ。もうすぐ寝ますから」
——寝る?
何が?
その時だった。
リュックのチャックが、**少しだけ内側から押し上げられた。**
ほんの1センチほど。
そこから——
**小さな指**が、出た。
私は息を止めた。
子どもの指。
血の気のない白い指。
その指は、外の空気を探るように、ゆっくり動いた。
私は立ち上がった。
「それ……」
声が震える。
男は優しくリュックを抱きしめた。
「怖がらないでください」
そう言って、リュックをぽんぽん叩く。
「この子、人が好きなんです」
その瞬間。
**ジジジッ**
チャックが、ゆっくり開いた。
男は止めない。
私は後ずさった。
暗いリュックの中から、何かがこちらを覗いていた。
目だけが、光っている。
子どもの顔だった。
でも——
**体がない。**
首から下が、リュックの奥の闇に溶けている。
男は優しく言った。
「ほら」
「新しいお友達だよ」
次の駅で、電車のドアが開いた。
私は逃げようとした。
だが——
背中が、重い。
いつの間にか、私の背中には
**見覚えのないリュック**が背負われていた。
中から、声がした。
「ねえ」
「次は、だれにする?」
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ヒェヽ( ̄д ̄;)ノ=3=3=3