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肩までの長さの髪に、緩やかなウェーブのパーマを掛け、異国情緒が溢れる面立ちは、二日前に立川駅前で純にぶつかった女。
「…………もしかして……恵菜?」
彼女の名札と顔立ちを、交互に向ける奈美。
「え? 奈美? 久しぶりだね……!」
恵菜と呼ばれた女性は瞠目した後、クールな奥二重の目を細める。
「っていうか、恵菜…………痩せた?」
「う……うん。標準体型に戻ったよ」
痩せた、と言われて嬉しかったのか、または戸惑ったのか、彼女は、はにかむように唇を緩めた。
(え? もしかして、この美女と本橋さん、知り合いなのか? 名前は恵菜……か……)
二人の会話を耳にしながら、純は密かに目を見開いていると、恵菜という女性に、ぎこちなく顔を向けられた。
「あのっ……一昨日、立川駅前で、私が思いっきりぶつかってしまった方…………ですよ……ね?」
「あっ……ああ、あの時は、すみません……でした……」
恵菜から、突然話を振られた純が、顔を引きつらせながら笑みを作った。
「こちらこそ、本当にごめんなさい」
「なっ……何? 所長と恵菜、知り合いなの!?」
純と恵菜の会話に、今度は奈美が二人を交互に見やりながら、瞳を丸くさせる。
部下でもあり、親友の妻に、こんな不格好なところを見られて恥ずかしい。
「いや……一昨日、立川の駅前で、俺がよそ見してて、彼女にぶつかったんだよ」
純は、当時の事を思い出して照れ臭くなったのか、顔を背けて後頭部を手で撫でつける。
(それにしても、俺の部下の友人は、綺麗どころの女ばかりだな。クールビューティな音羽さんといい、オリエンタルビューティな恵菜って女といい……)
純の女好きの虫が、ここへ来てモゾモゾと蠢き出した。
──本橋さんがいなかったら、ぶつかった事をきっかけにして、恵菜って女に声を掛けて、連絡先を聞き出していたのに。
不謹慎な事を、純は、つい考えてしまう。
「…………所長?」
上司の思っている事が分かったのか、奈美が嫌味と思うほど、ニッコリと笑みを映し出した。