TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

雨後雨

一覧ページ

「雨後雨」のメインビジュアル

雨後雨

3 - 【第三章】

2023年09月03日

シェアするシェアする
報告する

何が正しくて、何が間違っているのか。

それは誰にも分からない。

誰かの悲劇は、他の誰かには喜劇に映るのだから。


「…実験を、やめたい…?」

担当医師である彼は、俺が言った言葉を反復するようにたずねる。

これが自分勝手な判断であることは分かっている。彼はこの実験を仕事としている。突然職を手放せと言っているようなものだ。

「本当にすまな…

「よかったぁぁぁぁ!!」

「!?」

何を言われるかと覚悟していると、彼は突然大声で歓喜の声をあげ、俺に抱きついた。少し間を置いて落ち着くと、彼はまた話し始めた。

「続けようとか言われたら俺、殴ってでも止めようとか考えてたわ。」

「はぁ?「あくまで判断材料」じゃなかったのかよ。…それにお前、仕事…。」

「「あくまで判断材料」っつったのは確率的には100%じゃなかったからだ。それにお前が俺のこと忘れてたの結構キツかったんだからな。その上、お前が変わっちまうのは俺的にヤダ。」

「でも実験やめたらお前無職じゃねぇか!」

「ああ、そんなこと気にしてたのかお前。なら何も心配しなくていいぞ。」

「……え?」

「寝て目が覚めたら歳とらないで数年後の浦島太郎みたいなヤツには分からんかもしれないけどな、お前が何回か寝てる間、俺は数十年生きてんだ。で、その間にお前と似たようなの調べてたら、なんかいろいろ発見してな。その結果、功績を称えられ、今や俺は大金持ちだ。ちな、お前の実験に関しては完全に私的な目的だからな。実化器具類に関しては俺の自腹だ。だから途中でやめようが上にも怒られないし、俺の勝手だ。だから何も心配すんな。」

そう言って、彼は友人に向ける笑顔で笑った。


俺の実験をやめることになったはいいが、ずっと研究室に住んでいる訳にもいかず、担当医師いわく、道具は彼の自腹だが研究室は許可をとって借りているものなので、実験後の検査などの適当な理由で誤魔化せても、おそらく長くて1ヶ月だろうとのことだ。ありがたいことに、仕事につくまでは彼の使っていない部屋を貸してくれるそうだ。

昔の自分は随分と素晴らしい友を持ったのだろう。俺には勿体ないほどの。俺にはその頃の記憶が一切ないが、なんとなく彼と話していると安心する。

彼と話したことで気持ちが少し軽くなった気がした。次会ったら、デザイナーの彼にもすべて話そう。


公園のブランコに座る。今日の集合場所だ。しばらくすると彼が来た。彼もブランコに座り、何から話そうかと考えていると彼が先に口を開いた。

「最近雨降らないね〜。なんか肌とかも乾燥するし。」

「そういえば。季節的にもよく降る季節のはずなのに…。」

「まあ、そんな時もあるでしょ。」

そこから、しばらく沈黙が続く。話さなくてはと思っているのに、うまく言葉が出てこない。すると、彼が言った。

「そういえば、前言ってた悩み(?)、解決した?」

「あ、うん。」

ついに聞かれてしまった。説明しなければ。しかし、「もしこんな話をして、気持ち悪がられたら…」という考えが頭をよぎる。言葉に詰まっていると、彼が再び口を開いた。

「言いたくないなら、無理に言わなくていいよ。全部話すのが友達じゃないでしょ。隠しごとなんて誰にでもある。」

その時、顔はよく見えなかったがとても優しい声だった。そして、彼はこちらを見ると笑顔で尋ねた。

「僕のこと好き?」

「当たり前だろ。」

そう答えると、「なら良し!」と言って今度は歯を見せて笑った。


その後、俺たちが会う頻度が増え、週三くらいで会って遊ぶようになった。祭りに行ったり、ゲーセンに行ったり、田んぼがあるような所に遠出したり、時には就職についての話をしたりもした。

しかし、ある日彼は突然言った。

「しばらく会えないかもしれない。」

この作品はいかがでしたか?

0

コメント

1

ユーザー

お久しぶりです。恐らくあと2章くらいで完結すると思います。更新が遅くてすみません。読んでくださってありがとうございます。

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚