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「鰄郎さん、一体どこに行く?」
そう聞いた途端、鰄郎さんは少々小汚い
家の前で立ち止まった
「ここ、だよ」
不気味な雰囲気を醸し出しているが、やるしかない、これしか選択肢は無いのだから
鰄郎さんは、家のドアを開けて言った
「すみませーん!依頼の方はどちらでしょう」
すると、扉から優しそうな老人が顔を出した
「ああ、鰄郎さん、来てくれたんですね」
「うん、今日はどの部屋かな?」
鰄郎さんはこの家の人と普通に話している
知り合いなのだろうか
俺は、何を思った訳でもないが
ふと、鰄郎さんの顔を見た、少し顔が
強ばっているような…警戒しているような…
そんな目をしていた
「さぁ、行こうか」
「ああ、はい」
そう言うと、鰄郎さんは階段を上がって二階
へ行った
「うわぁ」
俺は思わず声が出てしまった、あまりにも
ゴミが散らばっている、高校時代の自分でも
ちゃんと部屋の整理整頓をしていた
「ダメだ、声を控えなさい」
「あ、すみません」
つい本音が漏れ、怒られてしまった
「ところで、君の名前を伺っていなかった
名前は?」
俺は、少し食い気味に答えた
「時織、時織治です」
「わかった、それでは治君、この部屋の右奥
をやってくれ」
ふと、ドアの方向を見ると老人が笑ってみていた
そんなことは気にせず、俺は作業を始めた
最初はどう選別すればいいのか分からず
立ち尽くしていたが鰄郎さんが色々
教えてくれたおかげで、人並みの仕事ができるようになった
「ふう、鰄郎さん、だいたいこんなもん
でしょうか」
「うん、いいね、縁郎さんに見てもらおう」
「あの人、縁郎さんというのですか」
「ああ、そうだよ」
先程から思っていたが、何か嗅いだことの無い
臭いが、この部屋に充満している
「治君、こっちへ来てくれ」
そう言うと、鰄郎さんは俺の腕を掴んで、玄関
に立たせた
「ここで待機していてくれ」
「え、まぁ分かりました」
「縁郎さん、部屋の掃除、終わりましたよ」
「おぉ、相変わらず仕事が早いこと、
ありがとう、鰄郎さん」
「いえいえ、縁郎さん、あなたにひとつ
尋ねたいことがある」
「尋ねたいこと…とは?」
鰄郎は鋭い眼光を縁郎に突き刺した
「いい加減、妻を突き放してやれ」
…
その場には、しばし沈黙が続いた
が、直ぐに縁郎は叫んだ
「あんた…!!」
縁郎が顔を真っ赤にして
「あなたのことは前々から調べていた、
あの事故、いや、事件を覚えているか?」
縁郎は苦虫を噛み潰したような顔をした
「あなたの妻、智也美菜さんは飲酒運転をしていたトラックに引かれた、100kmでね」
「ぐぅ!!」
縁郎は懐から包丁を取り出し、鰄郎に包丁を
突き刺すような体制で踏み切った
「いいかい、縁郎さん、現実はもっと厳しい
…あなたならそれを越えられと期待した
私がバカだった」
途端、縁郎が吹き飛び、壁に全身を強く
叩きつけられた
「あー、今日分の危機回避、もう一個使っちゃった」
縁郎は理解ができなかった、直接触れられた
訳でもないのに、吹っ飛んだ
「ずっと隠してあったんだろう?
妻の死体をあの部屋に」
「殺してやる!!」
そう叫び、縁郎は立ちが上がろうとするが
足が動かない
「!?」
「あぁ、暫くは動けないだろう」
治は、鰄郎を待っていた
「鰄郎さん、なんで俺を玄関に待機させたんだ、待ってろと言われたけれど」
すると、遠くからパトカーのサイレンが
聞こえた
それはだんだんこちらに近ずき、ついには
この家の前に2台のパトカーが止まった
「あなた、ここの家の人ですか」
すると、パトカーから降りた警察官が
俺に話しかけた
「いえ、依頼でこの部屋の掃除を」
「危ないから、今すぐそこを離れなさい!」
「えっ、でも」
「先程、その部屋に殺人鬼がいるとの通報が
入った!」
!!
治は衝撃を受けた、まさか…鰄郎さん、無事か
ガチャ…
すると、家のドアが開いた、そこから出てきたのは
鰄郎さんだった
「そこの君!手を後ろにやれ!」
警察官が叫ぶ
「おい、落ち着けよ警官、これを見ろ」
そう言うと、鰄郎さんはなにかの手帳を警官に
見せた
「こ、これは失礼致しました!」
そう、警官は言うと、家の中へ入っていった
「あの、鰄郎さん、これは…」
「あぁ、君はあの部屋の異臭に気づいたかい」
「まぁ、嗅いだことの無い臭いはするなって」
「あれは腐敗した死体だ、防臭していたようだが、腐乱臭が激しくなり、漂っていた」
!!
まさか、自分のすぐそこに、死体があったのか
?そう思うと、鳥肌が立つと同時に
気持ち悪くなった
「…なぁ、鰄郎さん」
「…なんだい」
「あなたは何者だ」
治は、カンの鋭さは人の10倍ある
すると、鰄郎は言った
「君さ、あの部屋に入った瞬間
この部屋に死体があることに気づいていた
よね、しかも、縁郎さんが笑っていることについても違和感を持っていたようだが、
君こそ何者なんだ?」
2人は、睨み合った