「時々・・・10年前にもどって何もかもやり直したく時があるわ・・・」
「そうなの?」
「うん・・・もし・・・康夫と結婚してなかったら・・・私にはどんな運命が待ち受けていたんだろうってね・・・」
その時の晴美ちゃんは旦那さんの康夫ではなく他の誰かの事を考えているようだった、遠い目をしている
あたしは首を傾げて晴美ちゃんに言う
「そんなに・・・今の結婚は不満?」
「不満というか・・・・結婚する前に想像していた事と現実が激しく違っていたと言う方が正解ね、もし三人目が出来なかったら・・・私は離婚してたかもしれないわ」
あたしは慌てて言った
「ええ?そうなの?」
「でも今は・・・子供の為にも我慢するつもり、でもその我慢もいつまで続くやら・・・・もう少し康夫が私や子供達に思いやりを持ってくれたらと思うわ・・・それに・・・康夫の給料は決して多くはないけど私一人が到底稼ぎ出せる額じゃないし・・・結局は私が我慢すれば済む話なのよね」
そうやって晴美ちゃんは悲しそうにお腹を撫でた、そして壁の時計に目をやる
「噂をすれば―――大変!もうこんな時間!あの子達を迎えに行かないと」
雨はやんでいた、あたしの濡れた服は半分ほど乾き、晴美ちゃんから貰ったベビー服や粉ミルクの試供品はユニクロの紙袋に入れられた
晴美ちゃんが玄関まであたしを送ってくれる
「実は来週から実家に里帰りするの」
「じゃ次に会えるのは生まれてからね」
「晴美ちゃん!帝王切開がんばってね」
「真希ちゃんの方が早く生まれそうね、インスタのDM知ってるだろうけど、LINEも登録しておく?」
「うんうん! 」
「生まれたらお互い写真送り合おうね!」
「絶対ね!」
あたし達は笑ってハグをした、お腹がぶつかり合ってまた笑った