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ホクロの住民
36
278
#学校
より
84
「あっ、おい! ちょっと待てって。すぐそこなんだから、入っていけばいいだろうが!」
後ろから男の声が響くが、もう振り向く気もなかった。
「何よ、あの男……嫌なヤツ!」
ようやくマンションに辿り着いて、エレベーターの昇降ボタンを押す。
早くきてほしいのに、かなり上階に行ってしまっているエレベーターは、なかなか降りてはこなかった。
「……ハァ……同じマンションなのに、先に行かなくてもいいだろうが」
着くのを待っている間に、あの男がエントランスに走り込んできて、私の横で息をついた。
あまり会話をしたいとは思えなくて、軽く頭を下げてそれ以上の突っ込みをやんわりと避けると、相手もさすがに気づいたようで、もう話しかけてはこなかった。
やっと目の前で開いたエレベーターに乗り込んで、彼の部屋の階を押すと、
「……一番上、押して」
後ろから声をかけられた。
背後を見ると、その人はエレベーターの奥の壁に腕組みをして寄りかかっていて、自分からボタンを押す気すらなさそうだった。
「自分で押せば、いいじゃないですか……」
横柄な態度に嫌気が差して、押さずにいると、
「信じられないな……あんた。それくらいしたって、いいだろうがっ」
男はそう言い捨てて、エレベーターのボタンをガッと音を立てて指で押し込んだ。
(……この人、このマンションの一番上に住んでるんだ……)
最上の五十二階に点いたライトを、ぼんやりと見つめる。
(こんな超高層マンションの最上階に住んでるなんて……一体、何者……)
ちょっとだけ振り返ってみると、着ているスーツは身体に合わせて仕つらえたらしい、いかにもな高級感が漂っていた。
じっと目を離せないまま観察をしていたら、その男がふと顔を上げた。
「なに、見てんだよ?」
ふと視線がかち合い、さっきまでちゃんと見てもいなかったその男の意外なカッコ良さに、知らず知らず目が惹き付けられる。
(こんなイケメンが、このマンションのトップに住んでたんだ……)
「なんだよ、俺に見とれてんの?」
言ってニッと笑うその顔に、ふいに現実に返される。
「そんなわけないんで、」
と、やや呆れたところに、降りるフロアに着いて、
「それじゃあ、さっきはありがとうございました」
そう形ばかりの挨拶をすると、エレベーターを後にした。
コメント
1件
うわ、このイケメン、態度は最悪なのに顔がいいってずるすぎますね……! エレベーターの中で「見とれてんの?」ってニヤつくシーン、ムカつくけどちょっとときめいちゃいました。最上階住みの高級スーツ、何者なのか気になります。続きが待ち遠しいです!