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俺は、生まれた時はβやった。このまま平凡に暮らしていくんやろなって、根拠もないのにそう信じとった。
”発情期”が来るまでは。
初めて発情期が来たんは、今のグループに加入したすぐ後のことやった。
その日は珍しく体調が悪かった。頭が重くて、身体もだるかった。最初は風邪でも引いたんやろか、なんて軽く考えとった。
だけど体調はどんどん悪くなっていって、家に着く頃には立っているだけでも倒れそうなほどしんどくなって。
鍵を開けるのも手元がおぼつかんくて、開けて入った瞬間玄関に倒れ込んだ。
あかん、立ち上がれへん、誰かに連絡せな。
回らない頭で考えてスマホを手に取ろうとしたとき、スマホが震えた。
康二『…めめ…?』
画面に表示されたのは紛れもないメンバーの名前。誰でもいいから助けてほしい。そう思って通話ボタンを押した。
蓮『康二?今家にいる?』
いつもと変わらんめめの声にひどく安心する。やけど、もう質問に答えられるような気力は無かった。
康二『……め、め…っ』
蓮『康二?』
いつもと違う雰囲気に気がついたんか、焦ったようにおれの名前を呼んどる。
蓮『康二?返事して?』
そう聞こえている間にもどんどん苦しくなって、めめの声が遠くなっていく。
苦しい、からだがあつい
ーーーーめめ、
康二『…たす、けて…』
それからしばらく気を失っとって、扉の向こうからめめの焦った声とドンドンと叩かれる音で気がついた。
蓮『康二!?開けるよ!?』
その言葉から1秒も経たないうちに、扉が勢いよく開いた。
その後の事はあんまり覚えてない。めめが救急車を呼んでくれて、次に目が覚めたのは病院やった。
目を開けたら知らない天井。腕には点滴の針が刺さっとって、点滴の袋には”発情抑止剤”の文字。
理解が追いつかんかった。
俺が、発情なんて、ありえへん。
だって俺は、俺は生まれた時からずっと、βやったんに。
しばらくすると看護師さんがやってきて、先生を呼んでくれた。
「向井…康二さんですね?」
康二『…はい』
心して聞いてください。なんて言われても、頭はこんがらがっとった。その先の言葉を、聞きたくなかった。
「貴方は、”後天性Ω”になっている可能性が高いです。」
想像はついとった、でも聞きたくなかった。俺が、Ωやなんて。
受け入れられるわけないやんか。
数年前から第2の性差別化を無くそうっていう運動は行われているし、能力もβとあまり差は無くなってきてる。それでも、中々Ωへの差別は無くならん。
俺がΩやって世間に知れたら活動にも支障が出る。俺にとって最後の光であるグループにそんな迷惑はかけたくなかった。
先生は色々と説明してくれとるけど、なんも耳に入ってこんかった。
発情抑止剤だけ貰って、家に帰ってきた。ソファに座り込んで考える。でも、いっこも考えはまとまらんかった
ひとつだけ決めたんは、絶対にバレないようにするってことだけ。
その日から俺の人生は、少しずつ苦しくなっていった。