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くるみ_226
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第13話 雨の日のお迎え
その日の夜。
夕飯を食べ終えた二人は、ソファでゆっくりとテレビを見ていた。
「明日、雨みたい。」
勇斗が天気予報を見ながらつぶやく。
「へぇ。」
仁人はマグカップを両手で包みながら画面を見る。
『明日は午後から雨が強まるでしょう。』
「傘、持っていかないと。」
「忘れそう。」
「玄関に置いとこうか。」
「……そうする。」
勇斗は立ち上がると、二本の傘を玄関に並べた。
「これで大丈夫。」
「ありがと。」
仁人は少しだけ笑った。
◇◇◇
翌日。
朝からどんよりとした空だった。
仁人が作った朝食を食べ、お弁当を持って二人は家を出る。
「行ってきます。」
「行ってきます。」
玄関の鍵を閉め、駅まで並んで歩く。
途中で勇斗がふと尋ねた。
「今日は残業ある?」
「たぶん少し。」
「終わったら連絡して。」
「うん。」
「迎えに行く。」
「……いい。」
仁人は首を横に振る。
「電車で帰れる。」
「でも雨強くなるって言ってたよ。」
「大丈夫。」
勇斗は少し考えたあと、優しく笑った。
「じゃあ、本当に困ったら連絡して。」
「……うん。」
◇◇◇
午後。
予報どおり、窓をたたく雨音がどんどん強くなる。
退勤時間になっても、雨脚は弱まらない。
「うわぁ……。」
太智が会社の入口から外を見て声を上げる。
「めっちゃ降っとるやん!」
「……。」
仁人も外を見る。
「傘ある?」
太智が聞く。
「ある。」
「なら安心やな。」
そう言った直後だった。
仁人はバッグを開ける。
「……。」
「どないした?」
「傘。」
「うん。」
「家。」
「……。」
二人は顔を見合わせた。
「忘れたん!?」
太智が思わず笑う。
「朝、玄関に置いたのに!?」
「……。」
仁人は小さく肩を落とした。
「忘れた。」
「珍しいなぁ。」
そのとき。
スマホが震えた。
画面には勇斗の名前。
『仕事終わった?』
仁人はすぐに返信する。
『終わった。』
すると、すぐに電話がかかってきた。
「もしもし。」
『仁人。』
「ん。」
『傘、忘れたでしょ?』
「……なんで分かったの。」
電話の向こうで勇斗がくすっと笑う。
『玄関に一本だけ残ってたから。』
「……。」
『今、会社の前にいるよ。』
仁人は驚いて入口の外を見る。
雨の中、大きな傘を差した勇斗がこちらに向かって手を振っていた。
「勇斗……。」
「勇斗くん、迎え来てくれたん!?」
太智が嬉しそうに笑う。
「優しすぎるやろ!」
勇斗は二人の前まで歩いてくる。
「お疲れさま。」
「……来なくてよかったのに。」
「でも迎えに来たかったから。」
仁人は照れたように視線をそらす。
「……ありがと。」
その小さな声に、勇斗は優しく笑った。
◇◇◇
「ほな、俺はこっちや!」
太智が傘を開く。
「勇斗くん、仁人頼んだで!」
「任せて。」
「また明日な!」
「うん。」
太智を見送ると、二人は一つの傘の下に並んだ。
肩が触れそうなくらい近い距離。
勇斗は少しだけ傘を仁人の方へ傾ける。
「勇斗。」
「ん?」
「そっち濡れる。」
「仁人が濡れないならいいよ。」
「……。」
「風邪ひいたら心配だから。」
仁人は少しだけ唇を結び、それから勇斗の腕をそっと引いた。
「半分。」
「え?」
「ちゃんと真ん中。」
勇斗は目を丸くする。
「二人で入ればいい。」
その言葉がうれしくて、思わず笑みがこぼれた。
「うん。」
雨音の中、二人は肩を並べて歩いていく。
冷たい雨とは反対に、傘の下だけはぽかぽかと温かかった。
コメント
1件
第13話、読み終わったよ〜〜〜!!😭💕💕 もうね、傘を傾ける勇斗くんの優しさに胸がきゅんきゅんした……! 仁人くんが「半分」って腕を引くシーン、めっちゃエモくない!? 雨の日の傘の下ってだけで特別感あるのに、あの距離感がたまらんかったよ…。 冷たい雨の中、二人だけぽかぽかしてる描写、もう完全にキュン必至っす🎀✨ ゆずなさん、素敵な作品をありがとうございます〜! 次も楽しみにしてるよ!⋆♡