コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
清水隠は、都内の薄暗いアパートに住む若い男だ。生活の糧は詐欺。
詐欺と言っても、派手な手口ではなく、小さな嘘を積み重ねて人々の財布を狙うタイプだ。元はブラック企業で働いていたが、心身を病んで辞めてしまった。
清水はいつものようにターゲットを探して街を歩く。
駅前の喫茶店前を歩いていた、サングラスに少し上品なスーツを着た男に目をつけた。落ち着いた様子からして金を持っているはずだ。
清水は “偶然” を装い、話しかけた。
「すみません、少しお時間よろしいですか? 実は困っていまして…」
だが、その男は予想外の反応を見せた。清水の話を最後まで聞く前に、静かに微笑んでこう言った。
「君、ずいぶんと安い手口だな」
その言葉に清水は背筋が冷たくなるのを感じた。
「えっと…何のことでしょうか?」
「わかるさ。君みたいな人間を何百人と見てきたからね。でも、もし本気で詐欺師を続けたいなら、もっと上手くやる方法があるよ」
清水は言葉を失った。男の目は鋭く、ただ者ではない雰囲気を漂わせている。
喫茶店に入り、男は珈琲を一口飲んで先程の話の続きを始めた。
「俺はヨウ。詐欺師だ。ただし、俺が狙うのは悪人だけ」
ヨウ。名前からして日本人ではないらしい。彼の発音は完璧な日本語だが、どこか異国の響きを感じさせる。
清水が疑問の目を向けると、ヨウはニヤリと笑った。
「俺は中国人だ。日本で少し “仕事” をしている。でも、君みたいにただ金を盗むのとは違う。俺のやり方は…そうだな、正義の詐欺師ってやつだ」
「正義の…詐欺師?」
清水は混乱した。
「俺はね、法律では裁けない悪人たち。詐欺師、汚職政治家、暴力団をターゲットにしているんだ。彼らの弱みを突き、時には社会的に破滅させる。 ターゲットの性格や心理を徹底的に研究し、完璧な計画を立てて金を奪い取る。それが俺のやり方」
ヨウはサングラスの下から優しい目をしたまま、こちらを真っ直ぐ見つめながら話す。
清水はふと疑問に思った。なぜ屋内なのにサングラスを外さないのか。
「ちょっといいか。どうして屋内なのにサングラスを外さない?」
急な質問にヨウは静かに驚く。
「あぁ。実は俺、目が光に弱くてね。ここはあまり眩しくなさそうだから外してもいいかな」
サングラスを外したヨウの瞳は、ガラス玉のような白色だった。
「にしても、急に話を変えてくるからびっくりしたよ。君…えっと、そういえば名前は? 」
「清水だ」
「清水。君はもっと、スリルのある詐欺に興味はないかい?」
スリルのある詐欺。その言葉に興味を惹かれた。
「ふふ。どうやら興味があるみたいだね。いきなりだけど、俺の詐欺集団の仲間にならないかい?」
「詐欺集団?」
「そう。まぁ、ただの詐欺師の集まりだよ。まだメンバーは0人。君が俺の初めての仲間になるってわけさ」
ヨウは机の上で指を組み、前のめり気味で提案してくる。
詐欺集団という言葉に、清水は更に興味を惹かれた。
「ちょうど今のやり方に飽きてた頃なんだ。その提案、乗るよ。俺を仲間にしてくれ」
ヨウはニヤリと笑う。
「そうこなくっちゃ」