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―――帰宅後


僕は、手を洗った後すぐ、自分の部屋で

スケッチブックの彼女に描いてもらった『おまけ』のページを見つめ直していた。

まるでプロの漫画家のような、繊細な感情の表現の仕方。

コマの分け方。吹き出しの書き方。

描き文字の書き方。


その全てが完璧なのだ。

これ以外の言葉が出ないほど――。


僕はこの時に思った。

―――将来、花溪さんのような漫画家になりたいと。



―――翌日・朝


僕は学校に向かって道を歩きながら、彼女のことばかり考えていた。

今日も話せるだろうか、会話のチャンスは訪れるだろうか。

そんなことが頭にずっとよぎっている。

それも昨日から。


僕はため息を一つ吐いた。


なぜ吐いたのかは、僕にも分からなかった。



―――校舎で


気づけば学校に着き、教室前までやって来ていた。

今日もきっと一番乗りだろう。


そう思いながら扉を開け、教室に一歩を踏み入れた。


その瞬間___


「おはよう」

「笠間くん!」


なんとも美しく、透明感のある声が 教室一体に響き渡った。

その声の主は、もちろん………


花溪さんだ。


「お、おはよう、花溪さん……っ」


そう言うと、彼女は嬉しそうににっこりと微笑んだ。


「(く……っ)」


朝からこんなに興奮するとは思っていなかった。

僕は目を閉じ、深呼吸をした。

そして同時に、花溪さんも話し出す。


「私、今日は漫画を完成させたくて、早めに学校へ来てみたの」

「教室に足を踏み入れた時、すごく清々しい気分になったわ」

「漫画も上手く描けそう、って思ってね――」


「(朝から漫画、か……)」


「おっと、話がつい長引いちゃったわね」

「よければ……笠間くんも、一緒にどうかしら?」


「えっ?」


「ほら、昨日、私の漫画を笠間くんが褒めてくれたでしょ?」

「それが嬉しくて、新しい漫画を書き出したのよ」

「それを一緒に書こうかな、なんて思ったりね」


花溪さんは優しい笑みを零し、持っていた鉛筆を机に置いた。

そしてこちらに近づき、僕の手を取ったのだ。


「は、花溪さん……?!」


「ふふ、ちょっと意地悪しただけよっ♡」


「そ、そんなぁ……」


彼女は悪戯っぽく笑った。

その表情に、僕は胸を打たれた。


ただ笑っただけなのに

表情を少し変えただけなのに。


僕の鼓動は分かりやすく高鳴っている。

そして言葉に詰まってしまった。


これは僕にありがちなこと。

感情が高ぶると、言葉がすぐに出てこない。

焦れば焦るほど、喉に言葉がつっかえる。


「っ………」

「とりあえず、一緒に描くことは決定ね?」

「う、うん…!」


僕は緊張しつつも、なんとか返事を返した。

よかった、ちゃんと言えた―――!


そう。

僕が一番苦手なのは、人とのコミュニケーション。

特に恋をしている相手と当たり前のように話すだなんて、そんな事は到底出来やしない。


でも今回、初めて言葉をちゃんと相手に伝えられた。

返事が出来たのだ。


花溪さんにとっては、ほんの些細な会話だったかも知れない。

でも、僕にとっては大きな一歩だったのだ。


そして、彼女と笑みを交わした時だった____



その時、ガラガラと音を立て、ひとりの生徒が教室に入ってきた。

その生徒とは………


なんと、僕がクラスで一番関わりたくないと思っていた

《鮫島燎(さめじま りょう)》

だった―――。

たった1コマに詰められた青春でも

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