テラーノベル
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「ちょ、な、なんで居るの!? 健人くん、なんで居るの!?」
私は、パニックで 落ち着いた発言が出来なかった。
そんな私に、健人くんも動揺しているようだ。
だけど、私ほどでは無かった。
「……なんでって言われても… ここ進む、って決めてたじゃないか。俺達。」
「そんな… だって、私と別れたばっかなのに…??」
自分の言葉だけど、『別れた』という所で 急に声のボリュームが下がった。
その発言に、健人くんは「自業自得だ」とばかりに うつむいた。
「……っ。」
「あのさ、健人くん。これ、中学の時の会話と同じ。 健人くん、一つも成長してない。」
「っ!成、長……」
健人くんは、私の言葉に これまでに無いほど敏感になった。
そして、こう告げた。
「俺は、成長出来ない…… よな。」
「もう、この道は行き止まりなのに… まだ、壁を越えようとしてる 馬鹿な俺が居る。」
「……」
健人くんの例えは、きっと私との恋の道を表してるんだよね……。
もう付き合えない、なんて馬鹿げた事言ってたし……
―――私は 遠回しに言葉を伝える健人くんに苛立ち、またキツい言葉と視線を投げかけてしまった。
「言いたい事あるなら、婉曲に言わないでよね!!」
「! ご、ごめん…」
「私は! 謝って欲しいんじゃない! ちゃんと、伝えて欲しいの……っ」
最後の弱々しい私の声に、健人くんは 顔を隠すようにしてまたうつむいた。
言葉が無くなったようだ。
そんな彼に、私は 最後の言葉をかけた。
「続きは、放課後で。」
「……っ、分かった…。」
たぶん納得はしていないけど、健人くんにこれ以上の言葉は無いことを理解していたから、こう伝えた。
間違ってるのは、健人くんだけ――― 私は正しい、はず……!
この考えをずっと貫き通してきた私。
でも今、私の進む道に 闇が見えた気がした。
進んではいけないの…? 健人くんと縁を切ろうか、なんて 一瞬でも考えた 私が悪いの……?
悪い、の_________?
―――昼休み
「―――って事があってさぁ……」
「はぁ?健人やってんな… せっかく言ったげたのに…」
「え?」
「いや、何も?」
「そう? それでさ……____」
――私は昼休み、今日あった出来事を 春人に話していた。
現在地は 人通りの少ない廊下前の教室。
ここは空き教室となっているから、誰でも入って良しとなっている。
私達は、そこでお弁当を食べながら、ゆっくりその話をしていた。
「―――本当健人、自業自得だな……。」
「ほんとそれ!自分でフッといて、意見も言えないなんてさ…… どうかしてるよ…w」
「____でもさ、アイツだって、努力はしてるぞ。」
「え…?」
春人の言葉に、私は目を丸くした。
春人の口から、健人くんを褒める言葉は出たこと無かったからだ。
「影で、七葉を支えてる。」
「どういう、事…?」
「見れば分かる。 ―――健人さ、アイツ、俺にどうすれば良いか相談してきたんだよなぁ…」
「相談……?どんな?」
思わぬ言葉に、私は驚きを隠せずにいた。
でも、何とか言葉を続ける。
「もう一回告白した方が良いか とか、やり直したいとか……」
「……」
「まあつまりは、七葉ともう一回付き合いたいんじゃね?」
「そ、そんなぁ……」
あんな人ともう一回付き合うなんて、そんなの考えられないよ……っ!
―――でもそう言えば、彼女とは別れたいって言ってたよね……
―――私と別れた理由って、本当に好きな人が出来たから、なの_____?
私は、今更ながらに そんな疑問を抱えた。
春人は 私の心を読み取ったかのように、私の疑問に答える。
「アイツが七葉と別れたいって言った 本当の理由、知ってるか?」
「本当の……? あれは偽りだったの…?」
「――あぁ、そういう事になるな。」
「で、本当の理由っていうのは……?」
「―――本当の理由は………」
「らしいぞ。」
「は!?え、マジどゆこと……」
思わぬ発言の数々に、私は目を真ん丸にして大声を張り上げた。
「七葉、健人と付き合ってた時、勉強サボってただろ?」
「___うん、まぁ……。」
「高校に進むためには 勉強が一番重要だから、一旦忘れてもらいたかったんだってよ。」
「忘れる……」
そんな馬鹿馬鹿しい理由なら、フラないでよ……!!
私が更に苛立ちを覚えていると、春人がまた言葉を出し始めた。
「絶対一緒の高校に進む って約束したから、それを果たすために――― なーんて言ってた。」
「嘘……っ、、」
―――あの時の夏、私がさり気なく健人くんに言った言葉を思い出す。
『一緒の高校、進むよね!絶対、受験合格しようねっ!』
「言った、かも……」
私ですら かすかな記憶なのに、健人くんは そんな事まで覚えてたの……?
―――そんなに気を使ってくれてたなんて、知らなかった………。
「好きな人が出来た、っていうのはデマカセで、他人からの告白の圧に負けたって。 そう話してたな。」
「だから、すぐ別れたんだ………」
“彼女は、とにかく告白成功すれば良い、って感じだったらしく、急に冷めた言葉使いになっていった…”
“俺、気付いたんだ……”
『大切な愛を疎かにするという罪を犯された被害者は、一生心の傷が償われない』
“って事に―――。”
“七葉には、ちゃんと謝りたい。”
「って言ってたぞ―――。アイツ___」
「健人くんっ……!!!」
私は立ち上がった。
無言の空き教室には、私の空気が漂い始める。
春人は何も言わず、言葉をただ待っていた。
そして私は、こう告げた。
「私、健人くんの所行ってくる…っ!」
「……おう。」
春人は何か言いたげだけど、私の圧には勝てなかったらしい。
――私、ちゃんと健人くんの気持ちを聞いてなかった。
一方的に言葉の攻撃をして、傷つけてるだけだったんだ。
―――健人くんは、伝えようとしてくれてたのかも知れない。
でもそれを妨げるように、私はキツい言葉を投げてたんだ―――っ。
私、辛い過去から逃げ出してた。
相手の気持ちなんか知らずに―――
こんなんじゃ、ダメ…!
ちゃんと、気持ち聞きに行かなきゃ……っ_____!
そう思い、扉を開けて 部屋を出ようとした時だった。
春人が、私の名前を呼んだ。
「ちゃんと気持ち、伝えてこいよ。」
「! ありがと……!」
「健人なら、今 体育館裏に居る。」
「分かった……! ありがと……っ!行ってくる!」
「行ってらー。」
春人は、あえて 明るく、雑に私を送り出してくれた。
きっと、プレッシャーを与えないためだろう。
―――春人の気持ちも背負って、伝えに行かないと_________っ!
私は、今度こそ と戸を開けて、体育館裏に急いだ。
「(健人くん、どこ……?)」
私は、広い体育館裏を 走り、健人くんを探し回っていた。
絶対どこかに居るはず―――
本当は会うのも嫌だけど、逃げてばかりじゃ 終われない。
今言わなきゃ、いつ言うの―――?
私は覚悟を決め直した。
―――その時、健人くんらしき人の背中が 見えた。
その背中は、この角を曲がった先に見えた。
___そして、ゆっくりと角を曲がった。
私の足音は聞こえていないのか、健人くんは 姿勢を崩さずに ただ前を見つめている。
私は、無言で健人くんの真隣に座った。
彼は少し驚いている様子だけど、決して言葉は発さなかった。
―――それからしばらく時間が過ぎても、私達は何も話さなかった。
そして ついに話を切ったのは、私の方からだった。
「あのさ……… 言いたいことがあるんだけど。」
「っ……! 何……、、?」
健人くんは 相当覚悟している様で、その有り様は面白かった。
だって、私が言いたいことは 彼の考えていることの、真反対の事だから。
「健人くん。」
「?」
「そうならそうと、言ってくれれば良かったのに。」
「えっ?」
私の いつもと違った優しい言葉に、健人くんは驚きを隠せていなかった。
そして私は、さらに続けた。
「私が健人くんを好きになった理由は、第一・優しい所。 第二・気遣い上手な所―――。」
「私、最初にそう言ったよね?」
「言ってた―――。」
「でしょ?やっぱり私、健人くんと縁を切るなんて無理だな。」
「? どういう事……?」
私は大きく息を吸って、言葉を発した。
「これからも、よろしくね―――!」
「! 七葉……?」
「春人から、聞いちゃった。裏の話。」
「! 春人、アイツ……っ」
「まさかそんな事思ってくれてたなんて、知らなかった。」
「そんな理由で、フラないで欲しかったな___。」
「ごめん―――」
「今は謝る時じゃない。私が褒めるとこっ。」
「! 七葉…… あり、がと――!」
健人くんは、優しい笑みを浮かべて そう返事した。
やっぱり、人一倍優しいんだよね―――。 健人くん。
そういうとこ、好き―――!!
____想い、伝えられたかな?
私がそう自己満足していると、健人くんが言葉をかけてきた。
「俺も、やっと気付いた。」
「―――!」
「七葉から、どれだけ温もりを貰ってたか…… そのありがたみに、どれだけ気づけて無かったか_____。」
「……(反省、してるんだ……)」
私が気がついてなかっただけだ。
反省、してたんだ―――
ただ私が意見を言ってるだけじゃない。
彼は、私の言葉を、想像以上に重く受け止めていたんだ。
その気持ちを考えてあげられなかった私って―――
そんな考えに陥っていると、また健人くんが話しだした。
「だから、俺から言わせて欲しい。」
「今度は、俺が言いたい。」
「! …うん。」
健人くんは、深呼吸をした。
そして、私にこう言ったんだ。
「七葉―――!」
「!」
コメント
1件
次でラストです…💦 申し訳ない💦💦 終①と題して書きました🙇m(_ _)m