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pnside



こん x3 ヾ


看「失礼します」


看「昼食を持ってきましたよ、それと検温をお願いします」


pn「…」


看「元気出しましょうね~」


そう言って看護師は無神経にカーテンを開け、病室に光を入れた。

夜とは違って陽の光が真っ直ぐに病室を照らし、その光が痛い。

それは思わずカーテンを閉めたくなるほどだった。

でも車椅子に座ることも出来ないのだからすぐそばにあるカーテンを閉めになんか行けやしない。

看護師の人とはちゃんと話したことがないし、色んな看護師の人が来るから名前も覚えてない。


怪我してるだけなのだから熱なんてないのに毎日熱を測って、好みに合わない味のご飯を口に入れる。

ご飯も利き手が使えないから食べさせてもらって、だから味が不味くても、吐き出したくても、どれだけ食べたくなくても嫌と言えない。


20分程で検温と食事を終え看護師は病室から出ていった。

昼間は俺にとっては息苦しい時間でしか無かった。

他の病室にいる誰かの面会に行く人や看護師の足音、エレベーターが到着する音、子供達の笑う声。

広い病院に響き渡る音一つ一つが頭に突き刺さって痛みを加える。

最初は静かに聞こえていたカートを押す音や機械音も今となっては先程言った雑音に入ってきて俺に危害を与える。

だから俺はそんな昼が嫌いだった。





昼の時間も終え時刻は15時を過ぎようとしていた。

面会に来る人の音も機械音も、全ての雑音が静かになり始めたこの時間帯に、1つの足音がこちらに近づいているような気がした。

その足音には機械音も何も無く、ただただコツコツと言った静かな足音だけだった。


昼間に昼食を食べさせに来た看護師が扉を閉めなかった為いつものノック音はなく、聞き慣れた「入るね」という軽い声が聞こえた。


rd「え、眩しっ …」


入ってきてすぐ先生はそう言ってカーテンと病室の扉を閉めてくれた。

それに対して感謝を言うわけではないけど流石に何も言わないでいるのも人としてどうかと思うので目を合わせないまま軽く会釈をした。

その会釈も先生はしっかり見ていたし、「ふふっ」と笑いをこぼした後に「やっぱり眩しかった?」と先生はまた少し笑いながら言った。


pn「…」


rd「… ねぇねぇちょっとこれ見てくれる?」


pn「  」


先生が俺の前に出したのはB5サイズのノートとペンだった。


rd「人が苦手な気持ちはすごく分かるし、話すのが嫌なのも分かるんだけど、俺ぺいんとくんと話してみたいんだ」


rd「だから、文字でもいいから先生と話してみない?」


珍しく答えを求めるような話し方だった。

俺はまたしても目を合わせることなく机上に置かれたノートとペンを見つめた。

でも、やっぱり心を開く気にはなれない。

何が俺をそうさせたのかは自分でもよく分からないけど、今はとにかく誰かに自分の心の内を見せる気にはならなかった。

俺は小さく首を横に振った。


pn「…」


rd「そっか、まぁまた気が向いたらだね」


それだけ言って先生は横の小さいテーブルにその2つを置いて病室から出ていった。

生きることも会話することも全て気持ちの問題とでも言うように扱う先生に多少の苛立ちを感じたが同時にそれが俺にとって1番楽でもあることに気づいた。

それでもさっきの言い方の先生はいつもと違って他の先生とどこか似たような言い回しで気に入らなかった。




外の景色はいつの間にか暗くなり外の建物が光り始めた。

昼間の太陽の光は苦手なのに夜景だけは何故だか嫌いじゃなかった。

まだ18時だと言うのに外はもう暗く気温も涼しくて、ついこの間までの明るさと猛暑はどこに行ってしまったのだろうか。

いつもと変わらないところから毎日変わる景色を静かに眺めていた。

今日は星は見えないけど、その分綺麗な満月がこちらを覗いていた。


こん x3 ヾ


静かな音を立てて先生が夕食を持って入ってきた。

看護師には何の戸惑いも感情もなく食べさせてもらうけれど先生だけにはなぜがそれが嫌だった。きっといつも俺が何も出来ないのにあんな態度でいるから笑われそうだと思っていたのだろう。

何とか自分で食べたくて箸を持ち上げた瞬間、包帯に覆われた右手がぐらりと揺れた。

しびれるような痛みが指先まで走るのを感じて思わず眉を寄せる。

利き手ではない左手に替えても力が入らず、煮物は皿の上で転がるだけだった。

小さく息を吐いて箸を置くと。部屋の空気がほんの少しだけ重くなる。


pn「……無理だ」


久しぶりに口から出した声はすごく小さく、自分でも聞き取れないほど弱かった。


その横で椅子に腰かけていたrdが、特に驚いた様子もなく立ち上がり、病室の備え付けの棚からスプーンを取って戻ってくる。その動作は淡々としていて、でも無駄がなかった。

足音はやけに静かで、看護師が忙しなく動き回るときのバタバタした音とは対照的だった。

足音が静かに近づいてくると自分の胸の音だけが大きく聞こえた。


rd「箸じゃ持ちにくいでしょ」


先生が食事に付き添うのは初めてだし、先生は整形外科ではないから俺が折れてることは知っててもどれくらいの状況なのかはまだ詳しく分かっていなかった。医師になってまだ半年くらいだし。

俺にスプーンを渡せば俺のことを見つめていた。


pn「ッ …. 、 」

手が震えてスプーンを離してしまった。

その姿が情けなくて久しぶりに心の底から悔しさが湧いてしまった。


rd「まだそこまで良くなってないのか … ごめんね」


先生は自分が座っていた椅子を引き寄せ、スプーンを手に取った。気負った様子もなく、まるで最初から自分の役目だったみたいに。


rd「ほら、口開けて」


短い声だった。

からかうでもなく、いたわるでもない。ただ事実を伝えるような声だった。

反発心を抱えていたはずなのにその声色に反発する力はいつのまにか消えていた。


rd「はい、あー」

最初の一口は味がわからなかったけれど 口に運ばれる感覚だけがはっきりと残る。

二口目、三口目と少しずつ食べるうちに 体の力が抜けていくのがわかった。

看護師に急かされて食べさせられるときの焦りはここにはない。

先生はこっちの呼吸を待ってくれる。手を引きすぎず、でも離しもしない距離感だった。


rd「飲み込めた?」


声がまた柔らかく響く。

頷く代わりに唇を擦ると、先生は無言で次を差し出した。

その無造作さが妙に救いだった。


食べ終わるころには皿の中身はずいぶん減っていた。

先生は食器が乗ったお盆を机の端に寄せて、ふと窓の方を見てから俺に視線を戻した。


「テレビつけようか」


呟きは雑談みたいに軽かったけれど、その提案が小さな橋渡しに思えた。


先生の動きは自然で、優しくて、でも医者としての距離を保つ何かも見えた。

よくわからない感情を抱えたままただテレビの画面に映る小さな星の映像を見ていた。


部屋に差し込む光が少し眩しくなって、俺は目を細める。

先生がリモコンに手を伸ばして画面の音量を落とす。

その仕草がまた寂しさを消すように思えた。


静かな時間が続く。

機械の低い電子音が、まるで呼吸の代わりのように部屋を満たす。

その中で先生と俺の存在だけが、余韻として残っていった。






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コメント

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ストーリー最高すぎます💕

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