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暗い
暗い
辺りは黒く塗りつぶされた様に
真っ暗だ
誰か、何かいないかと見回し聞き耳を
たてる
しばらくすると音が聞こえてきた
波の音だ
目を凝らすと磯が見えてきた
目の前には
ザーン…ザーン…
と音をたてる海と足場の悪い磯
気が付くと俺もそこにいた
少し気を抜けば転んでしまいそうだ
何でここにいるか分からず
立ち尽くしていると
泣き声が聞こえてきた
いつも間にか目の前の磯に
小さな子供が俺に背を向け泣いていた
俺はただその背中をぼーっと
眺めていた
すると子供がくるりと俺の方を向き
頭をうつむかせながら
ゆっくり
ゆっくり
近づいてくる
俺は何故か動く事が出来ず
ただただその子供を見ることしか
出来ない
子供は俺のすぐ目の前まで来て
ピタリと動きを止めた
そして
うつむかせていた頭をゆっくり
上げ…
――――
そこで目が覚めた
「また、あの夢か…」
俺は夢の内容を思い出しながら
ため息をついた
あの日から同じ様な夢を見る
2週間位前に同じ大学のよくつるんでいる
3人とある田舎町に出かけた
ただ旅行に行った訳ではない
俺達がその田舎に行ったのは他でもない
話題になる動画撮影をするためだ
撮影しに行くきっかけは
グループのリーダー的な奴が
俺を含む3人にある動画を見せてきた
事が発端だった
その動画は山奥にある小さな祠を
壊している動画で
コメントは批判的なものが多かったが
再生数はかなりのものだった
再生が終わるとリーダーは自分達も
これをやろうと言い出した
多少の批判は来るが過激な事をすれば
必ず注目されると言われた
俺達3人は軽い気持ちから了承した
そうして隣県にある田舎町に訪れた
田舎は人が少なく他所から来た
人間は目立つ為
泊まりで行くとばれる可能性がある
だから日帰りで行ける、有名ではない
小さな所を狙った
しばらく町を散策していると目的である
海の側の祠を見つけた
行った時間は人が少なかったので
人の目を気にせず動画撮影を行った
案の定動画は炎上したが思った以上に
再生されており俺達4人は少し驚きつつ
自分達が注目されていると喜んだ
その夜からだ
あの夢を見始めたのは
最初は違ったんだ
あんな目の前まで来てなかった
初めて見たのはただ俺がその場で
立ち尽くしていただけだった
それからだんだん夢を見るたびに
波の音が聞こえて
泣き声が聞こえて
子供が現れた
その子供が俺に背を向けていたのに
こっちに振り向いて
歩いて来て、目の前で止まって
それで…
今まででこんなに近づいて来たのは
無かったのに…
すると電話がかかってきた
リーダーからだ
出ると
「近くの公園まで来て欲しい」
と言われた
言われた通りに行くと俺以外の
3人が既に集まっていた
俺がその場に到着するとリーダーが
話し始めた
どうやら全員が同じ夢を見ていたらしく
流石に4人全員が同じ夢を見るのは
可笑しいそう思い
皆であの祠へ謝罪しに行こう
と言い出した
ただの偶然だと反対する奴もいたけど
もし、しなかったらこれ以上の異変が
あるかも知れない
祠の場所はそこまで遠くは無いので
謝罪しに行かずこれ以上の怒りを
買うよりもマシだと説得され
結局4人全員で謝罪しに行く事になった
明るい時間に行くと住民に見つかり
騒がれる可能性があるため
人が少なくなる夜に行った
祠のある場所に着くとそこにあったのは
誰かが直したのであろう綺麗な
祠があった
(祠壊してごめんなさい!
謝るのでもう夢に出て来たりしないで
下さい!)
綺麗になった祠に向かって手を合わせ
精一杯謝った
これでもう大丈夫だと安心して
俺達は帰路に着いた
一週間経ったがもうあの夢を見ない
他の3人もそうだ
きっと神様だから許してくれたのだろう
バイトが終わり自分の部屋に帰ろうと
部屋のドアノブを握りドアを開けた
その目に飛び込んだのは
自分の部屋じゃ無かった
一週間に行ったあの磯だ
急いでドアを閉めようとしたが
何故かドアが無く俺があの空間に
飲み込まれたようだった
とにかく逃げようと走った
その後ろからとてつもない高さの
波が襲いかかり俺は海の中へ
引きづりこまれた
息が苦しくてもがくが全く上に行けない
いつの間にか夢で見ていた子供がいた
何でだよ!?
謝っただろ!
許してくれたんじゃないのか!?
そう心の中で訴えた
もう…ダメだ
息が続かない…
すると子供の口が何か言葉を発した
その後、俺の意識が途絶えた
――――
“許しを乞うだけの謝罪はいらない”