テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「悠真、走って!」
美咲の声と同時だった。
俺の腕を掴み、公園の出口とは反対方向へ走り出す。
「ちょ、待っ……!」
振り返る。
黒いスーツの男がこちらへ歩いてくる。
走ってはいない。
ゆっくり。
まるで逃げられないと分かっているように。
その姿が、逆に恐ろしかった。
「こっち!」
美咲が細い路地へ飛び込む。
俺も必死についていく。
息が切れる。
心臓が痛い。
路地を抜ける。
また曲がる。
住宅街へ出る。
「まだ走る!」
美咲は一度も後ろを見ない。
迷いもない。
まるで何度も逃げたことがあるみたいだった。
やっと足を止めたのは、古いコインランドリーの裏だった。
二人とも壁にもたれかかる。
息が上がる。
「……撒いた?」
俺が聞く。
美咲は首を横に振る。
「違う」
「え?」
「追ってきてない」
「は?」
俺は思わず立ち上がる。
「追ってきてないってどういうことだよ!」
美咲は苦笑した。
「追いかける必要がないから」
その言葉に背筋が冷える。
「私たちのスマホ」
「位置情報はずっと送られてる。」
俺はポケットからスマホを取り出した。
「じゃあ捨てれば……」
「ダメ!」
美咲が強く止める。
「今捨てたら、その瞬間に”逃走”と判断される。」
俺の手が止まる。
美咲は静かに続けた。
「組織はスマホだけじゃなく、お金の流れも見てる。」
「銀行口座。」
「交通系IC。」
「防犯カメラ。」
「全部利用してる。」
超能力なんかじゃない。
現実の技術。
だからこそ怖い。
俺は初めて気づいた。
俺たちは監禁されていたんじゃない。
**社会そのものが檻になっていた。**
その時。
美咲が封筒の中から一枚のメモを取り出した。
さっきの名簿とは別の紙。
そこには、たった一行だけ。
**『参加者番号31 回収予定 本日20時』**
「31番……?」
「助けられる。」
美咲は迷いなく言った。
「今なら、まだ。」
「助ける?」
「組織より先に見つける。」
俺は言葉を失う。
逃げるので精一杯なのに。
他人を助ける?
美咲は俺を真っすぐ見た。
「悠真。」
「このままだと、31番は私たちみたいになる。」
「……」
「それとも見捨てる?」
胸が苦しくなる。
数か月前までの俺なら。
関わらない。
そう答えていた。
でも今は違う。
海斗の顔が浮かぶ。
帰ると言った女の子。
消えた参加者。
そして母さん。
もう。
これ以上。
誰かが同じ目に遭うのを見たくなかった。
俺はゆっくりとうなずいた。
「助けよう。」
美咲は初めて少しだけ笑った。
「やっと仲間になったね。」
その瞬間。
俺のスマホが震えた。
画面を見る。
新着メッセージ。
【参加者番号17】
【行動評価を更新しました】
その下に表示された一文を見て、
俺たちは同時に息をのんだ。
**【危険人物に指定しました】**
(第二十四話へ続く)
コメント
1件
「社会そのものが檻」って一文、めちゃくちゃグッときました…。現実の技術でここまで追い詰められる感じ、SFっぽいのに妙にリアルでゾッとしますね。悠真が「助けよう」って迷いながらも選んだ瞬間、すごく良かったです!最後の「危険人物に指定」で終わるの、続きが気になりすぎます〜!
2,153
#狂愛
柏木さくら
1,634
#ホラー
天野 夢縁
359
#タイムリープ
卵焼き
222