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Mintはあきなさんを祝福する
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玲奈
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「いい、新堂くん? 会場に入ったら、もう『インキャの新堂』じゃないからね。あんたは今日好きの歴史を塗り替える超絶美少年・新堂駿なの。わかった?」
「う、うん……。でも、やっぱり緊張する……」
都内にあるテレビ局の待合室。駿は、いつもの地味メガネと大きすぎるマスクをカバンにしまい、結衣が用意した衣装に身を包んでいた。爽やかなブルーのネクタイを少し緩め、首元にはあのトレードマークの青い革のチョーカー。
前髪の隙間からのぞく瞳は、緊張で少し潤んでいて、写真以上の圧倒的な「あざと可愛さ」を放っている。隣に立つ結衣は、まるで我が子を大舞台に送り出すステージママのように拳を握りしめていたが、その顔は駿の格好良さに少し赤くなっている。
『次の方、新堂駿さん。面接室へどうぞ』
スタッフに呼ばれ、駿の心臓がドクンと跳ねた。
「行ってくる……」
「堂々としてきなさい!」
結衣に背中をバシッと叩かれ、駿は意を決して面接室の重い扉を開けた。広い部屋の奥には、長机に座った番組のプロデューサーやディレクターなど、大人の面接官が4人。誰もが数々のイケメン高校生を見てきた、目の肥えた業界人たちだ。
「失礼します……。高校1年の、新堂駿です」
駿が部屋に入り、お辞儀をして顔を上げた瞬間――。面接官たちのペンの動きが、ピタリと止まった。
「……え?」
一人の女性ディレクターが、息を呑むのが分かった。書類の写真が良すぎる場合、実物は「写真映えが良かっただけ」というケースも多い。しかし、目の前に現れた駿は、写真の何倍も透明感があり、夕日のような儚さと、守ってあげたくなる美しさを持っていた。
「新堂くん、だね。……その首のチョーカーは、自分で選んだの?」
チーフプロデューサーの男性が、興味津々といった目で身を乗り出してきた。
「あ、いえ……。僕の、その……敏腕プロデューサー(結衣のこと)に、これが僕のギャップを引き立てるからって、無理やりつけられました」
駿は恥ずかしそうに頬を染め、はにかみながら正直に答えた。その瞬間、面接官たちの目がキラリと光った。
(何この子、天然であざとすぎる……!)
(この恥ずかしがりながらの笑顔、女子高生が絶対狂うやつだ……!)
大大人たちの間で、声にならない興奮が走る。
「新堂くん、もし『今日好き』の旅に出たら、どんな恋愛がしたい?」
「意中の女の子を、どんな風に2ショットに誘う?」
矢継ぎ早に飛んでくる質問。駿はパニックになりそうだったが、頭の中で結衣と放課後の教室で何度も繰り返した「特訓」を思い出した。
(水瀬さんと練習した通りに、やるしかない……!)
駿はふっと真剣な表情になり、面接官の一人を真っ直ぐに見つめた。
「もし……気になる子がいたら。他の誰にも渡したくないので、海が見える場所に誘って、僕だけを見てほしいって……真っ直ぐ伝えます」
少しハスキーで、だけど芯のある声。言い終えたあと、またすぐに耳まで真っ赤にして俯いてしまう駿。面接官たちは、全員が無言で深く頷き、資料の評価欄に特大の『◎』を書き殴っていた。面接が終わり、待合室に戻った駿は、緊張の糸が切れて結衣の前にへなへなと崩れ落ちた。
「水瀬さん……終わった。僕、もう、上手く喋れたか全然分かんない……」
「お疲れ様、新堂くん! すっごい緊張してたじゃん!」
駿がいつものマスクを大急ぎでつけ直そうとした、その時。後ろから「あの!」と、先ほどの女性ディレクターが息を切らせて走ってきた。
「新堂くん! 素晴らしい面接でした! これ、気が早いんだけど……次の『新シーズン』の旅のスケジュールです。来月、3泊4日で海外なんだけど、パスポートって持ってる!?」
「え……?」
マスクを片手に持ったまま、駿は呆然と結衣の顔を見た。結衣の目は、これ以上ないほどキラキラと輝いている。
「持ってます! パスポート、ばっちりあります!!」
こうして、インキャとして静かに生きたかったはずの新堂駿は、結衣の完璧なプロデュース(と駿自身の圧倒的な魅力)によって、ついに『今日好き』の新メンバーとして、全国にその素顔を晒す旅に出ることが決定してしまったのだった――。
コメント
1件
読み終えました!第3話、めちゃくちゃ良かったです。冒頭の結衣さんの「今日好きの歴史を塗り替える超絶美少年」という煽り、面接官のペンが止まる演出、そしてあの天然あざと笑顔…構成が鮮やかでした。特に「他の誰にも渡したくない」宣言からの耳まで真っ赤、あのギャップは確実に視聴者(読者)を仕留める設計だと感じます。チョーカーが単なる装飾じゃなくて「結衣さんのプロデュース品」と開示されるのも巧い。パスポートのくだりで一気に次の旅が見えて、続きが気になって仕方ないです。