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「……ねえ、これ見た?」
「見た見た! ヤバくない? 今回の新メンバー、異次元なんだけど!」
翌週の月曜日。高校の教室は、朝から異様な熱気に包まれていた。女子たちがスマホを囲んで黄色い悲鳴を上げ、男子たちもどこかそわそわとした様子でその画面を覗き込んでいる。クラスの片隅で、新堂駿(しんどう しゅん)は机に突っ伏したまま、制服のポケットの中で震えるスマホをぎゅっと握りしめていた。
(通知が……通知が止まらない……!)
昨日、YouTubeとTikTokで『今日、好きになりました。』の新シーズン予告映像が解禁されたのだ。そこに映っていたのは、首に青いチョーカーをつけ、夕日の中でハニカミ笑顔を浮かべる『謎の超絶美少年・シュン(高1)』の姿。ネット上は一瞬で大炎上(もちろん良い意味で)した。
『今回の今日好き、レベチなイケメンがいる』
『このチョーカーの子、可愛すぎて心臓痛い』
『どこの高校? 誰か特定して!』
瞬く間にトレンド入りを果たし、まだ第一話の放送前だというのに、駿の番組用公式Instagramのフォロワー数は一晩で5万人を超えていた。
「おい新堂、日直の仕事、日誌書いといてくれよ」
「あ……はい、わかりました……」
声をかけてきた男子に、駿はわざと猫背を強め、重い前髪の奥からぼそぼそと返事をする。大きな白マスクに、度のきつい地味メガネ。今の駿は、どう見てもネットを騒がせている『国宝級イケメン・シュン』とは真逆の存在だ。
(危ねぇ……。絶対にバレるわけにはいかない……!)
駿が冷や汗を流しながら黒板に向かったその時、廊下から水瀬結衣(みなせ ゆい)が激しく手招きしているのが見えた。駿は誰も見ていない隙を突いて、旧校舎の空き教室へと滑り込んだ。
「新堂くん!! 見た!? トレンド1位だよ! 1位!!」
扉が閉まった瞬間、結衣がスマホを掲げて飛びついてきた。その目は興奮でランランと輝いている。
「水瀬さん、声が大きいよ……! もう僕、生きた心地がしないよ。ネットで『どこの高校か特定しよう』って動きまで出てるんだよ!?」
「大丈夫だって! 学校でのあんたは100%のインキャなんだから、あの神がかったイケメンと同一人物なんて誰も思わないって!」
結衣はそう言って、駿の顔をまじまじと見つめた。
「でもさ……本当に格好よく映ってた。私のプロデュース、大成功じゃん?」
満足げに胸を張る結衣。しかし、その耳がほんのり赤い。実は結衣も、画面に映った駿のあまりの美少年ぶりに、家で何度も動画をループ再生して悶絶していたのだった。
「ありがと……。水瀬さんのおかげで、面接も通ったしね」
駿は照れくさそうに笑い、あごのマスクを外して、地味メガネを机に置いた。重い前髪の間からのぞく、夕日を吸い込んだような綺麗な瞳。
「――あ」
結衣の心臓が、またドクンと跳ねる。画面越しの『シュン』も凄かったが、目の前で無防備に微笑むリアルの駿は、それ以上に破壊力があった。
「な、何よ。学校では絶対にその顔しないでよね! 私だけの……じゃなくて、まだ秘密なんだから!」
「うん、わかってるよ。でも、来週からはついに本編の放送が始まるんだよね? 本当に大丈夫かな……」
不安そうに呟く駿。しかし、2人の『完璧な隠蔽工作』は、思わぬところから綻び始めることになる。放課後。駿がインキャ姿に戻り、いつものように一人で下校しようと下駄箱に向かった時のことだ。クラスのギャルグループのリーダー格である女子が、スマホを見つめたまま、駿の前でピタリと足を止めた。
「ねえ……新堂くん、だっけ?」
「え……? あ、はい……」
心臓が飛び出るかと思った。ギャルはスマホの画面(チョーカーをつけたシュンの拡大写真)と、駿の顔を、何度も見比べている。
「新堂くんってさ……。マスク外すと、どんな顔してんの?」
じっと覗き込んでくる鋭い視線。駿の背中に、一気に冷たい汗が吹き出した。ネットでの大バズりは、思った以上に早く、駿のすぐ足元まで迫ってきていたのだった――。
コメント
1件
うわー、4話、めっちゃ面白かったです! 「バレるかも…!」ってヒヤヒヤしながら読んじゃいました。 結衣さんの、つい赤くなっちゃう感じとか、秘密を抱えた2人のやりとりがすごく可愛くて、読んでて自然と笑顔になりました。 あのギャル女子が駿を止めたシーン、めっちゃドキドキしました…! 次、どうなるんだろう…続きが気になります!
#恋愛リアリティーショー
#ガチ恋