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ある日の放課後。
夕暮れの廊下に呼び出された美羽は、胸の鼓動が止まらなかった。
声をかけてきたのは陽向だった。
〔 なあ、美羽……お前、最近なんか元気ないよな。もし悩んでんなら、俺に話してくれよ 〕
その明るい笑顔が、今はどこか不安げに揺れている。
そして、ほんの少しの沈黙のあと__
〔 …俺さ、お前のこと、ずっと好きだった 〕
時間が止まったように感じた。
耳の奥で、心臓の音がやけに響く。
ノートの相手と、陽向の言葉が頭の中で重なりそうで、でもどこか違っていた。
返事ができずに俯く美羽。
そんな彼女を、廊下の影から見ていた人がいた。
図書室の常連で、静かに人を観察するような彼の目。
彼は美羽と陽向のやりとりを見て、ただ無言でその場を去った。
その夜、ノートを開くと返事が来ていた。
_「 今日、誰かから告白された? 」
心臓が止まりそうになる。
誰が書いたのか、本当に分からなくなっていた。
_『 …返事はまだしてない。正直に言うと、
私はあなたが気になってる。 』
そう書きながら、美羽は涙がにじむのを感じた。
現実の陽向の告白と、ページの向こうの相手への想い。
二つの気持ちが交錯し、答えを出せない自分が苦しかった。