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美羽は焦っていた。
陽向からの告白の返事をしないまま数日が過ぎた。
そしてノートの相手は、問いかけるように美羽の心を試してくる。
_「 君は、誰を選ぶ? 」
( ……そんなの、まだわからないよ )
泣きそうになりながら、美羽はページにペンを走らせた。
_『 私は……あなたに会いたい。正体を教えて 』
その瞬間、ページの端にインクのしみが広がり、ぐしゃりと破れてしまった。
美羽は慌てて直そうとするが、破けた部分には大事な言葉が隠れていた。
_「 もしも会うなら___ 」
そこで文字は途切れていた。
『 ……どうして…… 』
涙がぽろりと落ち、破れたページににじむ。
机の中に戻したそのノートは、どこか取り返しのつかないもののように見えた。
翌朝。
机を開けても、ノートは消えていた。
どこにも見当たらない。
( まさか、もう……終わり? )
胸が苦しくて、授業どころではなかった。
その日の放課後、蓮が美羽を呼び止めた。
「 ……話がある 」
真剣な声。
その瞳の奥に、言葉にできない秘密を宿していた。
同じ頃、校庭の隅で陽向もまた、決意した顔をしていた。
〔 美羽に、もう一度ちゃんと伝えよう 〕
――そして夜。
美羽の机に、破れたノートの続きを書いたページがひっそりと戻されていた。
_「 もしも会うなら、屋上で 」