テラーノベル
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放課後の教室。
窓が少しだけ開いていて、
カーテンが、ゆっくり揺れていた。
誰もいない。
けれど、孤独じゃない。
おらふくんは、自分の席に座ったまま、
おんりーの背中を見ていた。
黒板を消す音。
それが終わるまで、なぜか声をかけられなかった。
「……さっきの話さ」
おんりーが、振り向かずに言う。
「……名前はいらないって言ったけど」
少し、間が空く。
「……本当は」
消したはずの黒板に、
また文字を書くみたいに、言葉を探している声だった。
「……俺、怖いんだ」
おらふくんは、初めて聞いたその弱さに、
息を止めた。
「……守る側でいなくなったら」
「……お前が、離れていく気がして」
静かすぎる教室で、
その言葉だけが、落ちる。
おらふくんは、立ち上がった。
一歩。
もう一歩。
「……それ、ちがう」
声は、震えていたけど、止まらなかった。
「……おんりーがいなくなったら」
「……俺のほうが、困る」
おんりーが、ゆっくり振り向く。
驚いた顔。
そして、少しだけ、安心したみたいな顔。
「……俺さ」
おらふくんは、胸に手を当てる。
「……誰かに、気にかけられるの」
「……ずっと、こわかった」
「……でも」
視線を上げる。
「……おんりーが、倒れたとき」
「……“守らなきゃ”って、思った」
それは、
助けられる側の言葉じゃなかった。
「……それって」
おんりーが、かすれた声で言う。
「……俺が、弱くなってもいいってことか?」
おらふくんは、少し考えてから、答える。
「……弱いときのほうが」
「……ちゃんと、見える」
「……逃げないって、決めたから」
一瞬。
沈黙。
でも、今度の沈黙は、
怖くなかった。
おんりーは、深く息を吸って、吐いた。
「……俺」
「……お前の前では」
「……強いふり、やめてもいい?」
その問いは、
告白みたいで、
でも、もっと現実的だった。
おらふくんは、うなずく。
「……俺も」
「……ひとりで、がんばらない」
二人の距離は、
さっきより、ほんの少しだけ近い。
触れてはいない。
でも、心は、もう同じ場所に立っている。
「……なあ」
おんりーが、少しだけ笑う。
「……これ」
「……BLって言われたら、どうする?」
おらふくんは、首をかしげる。
「……わかんない」
「……でも」
少し考えて、続ける。
「……悲しさが、減るなら」
「……名前は、なんでもいい」
その答えに、
おんりーは、目を伏せた。
泣きそうなのを、
必死に隠すみたいに。
悲しさは、まだ消えていない。
でも今は、
分け合える重さになっている。
それだけで、
十分、前に進んでいた。
コメント
1件
わけあえるおもさ…(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)