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「うう、こわ…」

廊下に出てみて、改めて痛感する。

ほんとに、残業してるのってわたしだけみたい。

暖房どころか照明すら落とされた廊下はひんやりとしていて真っ暗で、非常出口や警報機の派手な光だけが不気味な雰囲気をかもしだしている。

怖いから急いで歩いても、

ぺたぺた…。

サンダルの足音が妙によく響いて…余計に怖くなる。

うちの社がまるまる入っているこのビルは、数年前に中古で買った時点で、築四十年は経っていたらしい。

そんな代物だから、まことしやかにささやかれている「いわく」なんてのもあったりする…。

『このビルのどこかに、誰も入ってはいけない開かずの部屋がある』

とか。

『残業苦で自殺した男性社員の霊が、夜な夜なビルの中をさまよっていて…実はこの会社が残業ゼロを推進しているのも、その霊の影響のせいだ』

とか…あまり楽しめないウワサが…。

ぶるり。

…こういう状況ほど、こういうウワサを思い出しちゃうのはどうしてなんだろう…。怖くなってきちゃったよ…。

ここは早くオフィスに戻って、休憩がてらネットでも眺めて気晴らししよう…!

と、小走りに煌々と光る自販機コーナーに駆け寄るなり、入口近くの販売機に手早く小銭を入れる。

ホットココアのボタンを押して、落ちてきた缶を手に取った。

「熱…っ」

けど、急いで掴んだ缶は思いのほか熱かった。

つい手を離してしまって落ちた缶は、転がって自販機と自販機の隙間へゴロゴロ…。

ああもう、わたしってばこんな時もドジ…。

手を伸ばした。

けど…うう、なかなか届かない。

こんな時小柄でよかった。

自販機と自販機の間に身体を押し込んで、手を伸ばした。

もうちょっと奥…奥…。

コツ。

コツ…。

その時だった。

妙な音が、聞こえた気がした。

コツ。

コツ…。

気のせいじゃない。足音だ。

足音が、こっちに近づいてくる。

え?なに?

わたし以外に残っている人、いるの?

コツ。

コツ。

男の人っぽい足音。

きっと誰かがまだ残っているんだ、そうにちがいない。

廊下に出て、確認してみよう。

けど。

『残業苦で自殺した男性社員の霊が、夜な夜なビルの中をさまよって…』

まさか…。

まさか…ね…。

コツ。

コツ。

コツ。

コツ。

どんどんこちらに近づいてくる足音。

コツ。

コツ。

コッ…。

止ま、った…。

すぐ近く。

雰囲気を感じる。

どうしよう。

身体が、動かない。

恐怖で身動きがとれなくなってしまった!

まぬけにも、身体を自販機の間に挟めたままで!

わたしってば、もう本当にどうしようもない…!

怖いよ…!

コツ…コツ…

なにかを探すように、足音はゆっくりとすぐそこまで近づいてきた…。

震えが止まらない。

わ、わたしこのまま、初霊体験してしまうんだ…!

ぼっち残業中に、はぢめての霊との遭遇…みじめすぎる…ぅう…!

もうやだ。やだよ…怖いよ…!

ふいに。

視界に人の姿が入りこんだ。

スーツじゃない。

白のハイネックセーターを着た背の高い…。

「ひっぁ…」

思わず上擦った声をあげてしまった。

すると、

ばっ!

霊もこっちを向いた!

「きゃぁあーー!!!!」

「うわっ!」

…意外なことに、霊もまたびっくりした声を上げた。

わぁあ…霊もビックリするんだなぁ…って。

あれ…?

君に恋の残業を命ずる

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