テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
紙とペンを受け取った焔垂は、机に向かうと迷いなくペンを走らせ始めた。
記憶を掘り起こすように眉をひそめながらも、その手は止まらない。
数分後、焔垂は一枚の紙を皆の前へ差し出した。
「こ、こんな感じかな・・・」
茜が興味津々に身を乗り出す。
「どれどれ?」
全員が紙を囲み、描かれた絵へ視線を落とした。
その絵は交差点らしき場所と横断歩道。
そして4人の人影に囲まれた1人の少女が、道路の手前で横になっていると言う構図が描かれていた。
だが、その絵はあまりにも簡略化されている。
棒人間のような人影に、真っ直ぐな線だけで描かれた横断歩道。
ハッキリ言って下手すぎた。画伯だった。
それを見た茜は思わず吹き出した。
「ぷっはっ、ちょ、何これ(笑)」
焔垂は顔を真っ赤にして抗議する。
「わ、笑うなよ!」
しかし茜は笑いを堪えきれない。
「いや、いくら何でも下手過ぎだって(笑)」
「しょうがないだろ!絵心なんてないんだから!」
焔垂は紙を取り返すように抱え込みながら言い返す。
「慣れないながらも必死に描いたんだよ!」
信愛は苦笑しつつも、改めて絵へ視線を向けた。
「でも、この絵を見る感じ──」
紙の一点を指差す。
「1人の女の子を・・4人の女の子が
いじめてるみたいに見えるね」
焔垂はゆっくりと頷いた。
「ああ・・・そんな感じだったよ
それに服装はみんな学校の制服って感じだった」
少し考え込みながら付け加える。
「多分、女子高生だったんじゃないかな?」
「女子高生か・・・」
信愛は小さく呟く。
「事故の被害者が全員女子高生
っていうのにも通ずる部分があるね」
「あ!確かに!「そういう見方もあるな!」
信愛はさらに問い掛ける。
「顔は認識できた?」
焔垂は首を横に振る。
「いや、顔には、なんて言うか黒い|靄《モヤ》
みたいなのがあって顔までは認識出来なかった」
「そっか・・・」
茜は紙の中央を指差した。
「このバーコードみたいなやつは何?」
焔垂は呆れたようにため息をつく。
「バーコードって言うな
どう見ても横断歩道だろーが!」
#普通
野々さくら
543
805
44
ありあ
159
「ああ、横断歩道ね・・・」
茜は薄ら笑いを浮かべる。
そして信愛は再び焔垂へ向き直る。
「どんな感じでいじめられてた?」
焔垂は目を閉じ、映像を思い返す。
「な、なんて言うかな・・・」
言葉を探しながら、ゆっくり口を開く。
「なんか4人がかりで、1人の女の子の手を掴んで
道路に引き摺り込もうとしてる感じだったよ」
部屋の空気が一気に重くなる。
茜は笑顔を消し、険しい表情で呟いた。
「え?なに?それ・・・それって
いじめって言うより犯罪に近くない?」
信愛も静かに頷く。
「た、確かに・・・」
そのとき、黙って話を聞いていた銚子が口を開いた。
「八乙女君くんが見たその映像が
魂に刻まれた記憶だとするなら―──」
一拍置き、静かに続ける。
「その霊は、かなりの怨念に満ちていそうね」
信愛は複雑そうな表情で頷いた。
「確かに・・・」
あれほど凄惨な記憶を抱えたまま、命を落としたのだとすれば、強い未練や怒りが残っていても不思議ではない。
「そんな経験したら、無理もないよね・・・」
誰に向けたともないその言葉に、茜は小さく息を呑んだ。
「やばすぎだよ・・・」
コメント
1件
焔垂さんの絵、思わず笑っちゃいましたけど(ごめんなさい!)、その後の展開でぎゅっと心が締め付けられましたね……。あのコミカルな空気から一転、4人がかりで道路に引き摺り込もうとする描写、すごく生々しくて怖かったです。バーコード呼ばわりされた横断歩道の絵が、今は重く胸に残ってます。銚子さんの「怨念に満ちてそう」の一言で、また一段と不気味さが増しましたね。続きが気になります!