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春が終わりに近づき、初夏の訪れを感じる季節になった頃、蒼と美月は日々の忙しさに追われる中で、少しずつ互いの気持ちにすれ違いを感じ始めていた。職場での責任が増した美月は、毎日のように遅くまで働き、疲れた体で家に帰ると、いつの間にか蒼に連絡する気力を失っていた。一方、蒼も新しい仕事で失敗を繰り返し、心に余裕を持つことができなくなっていた。
ある夜、美月は家に帰ると未来ノートを手に取り、しばらくページをめくった。そこには蒼と一緒に書いたたくさんの夢が詰まっていたが、最近の忙しさの中で、それらの夢を思い出す時間すら失っていたことに気づいた。
「私、こんな風に夢を忘れてしまっていいのかな…」 美月はぽつりと呟き、ノートをそっと閉じた。その時、スマホが光り、蒼からメッセージが届いていた。しかし、彼の「元気?」という短い言葉にさえ、どう返事をするべきかわからず、そのまま既読をつけずに画面を閉じてしまった。
一方の蒼もまた、美月との距離を感じるようになっていた。久しぶりに送ったメッセージに反応がないことが、彼の心をさらに不安定にしていた。 「美月、何かあったのかな。それとも、俺たちの関係はもうダメなのか…」 蒼はそう考えながら、彼女と過ごした楽しかった時間を思い出していた。しかし、忙しい現実がその思い出をかき消すかのように彼を急き立てた。
そんな中、ある週末の夜、蒼は意を決して美月に電話をかけた。電話の向こうで美月の声が聞こえた瞬間、蒼の胸に溜まっていた不安が一気に溢れ出した。 「美月、最近全然話せてないけど、大丈夫?俺たち、このままでいいのかな。」 蒼の問いに対し、美月はしばらく沈黙した後、静かに答えた。 「ごめん、私もどうしたらいいのかわからなくて…。忙しさに押し流されて、未来ノートのことも、蒼のことも、ちゃんと考えられなくなってた。」
二人の声には、互いを大切に思う気持ちと、それをどう表現するべきかわからないもどかしさが滲んでいた。しかし、この会話は二人にとって重要な第一歩となった。彼らは忙しい日々の中で立ち止まり、もう一度未来ノートを開き、一緒に夢を描き直す決意を固めたのだった。
その翌日、二人は久々に会う約束をした。再び未来ノートを手に取り、彼らは失いかけていた絆を取り戻すための一歩を踏み出した。