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俺は皇様を殺した。しかし、そのときはまだ、彼が皇様だとは知らなかった。
ただの一般人だと思ってた。まさか、あのVtuber、皇様(すめらぎ サマー)だったなんて、あの瞬間に気づくはずがなかった。
あの日、俺は街で見かけた女性に目が留まった。背が高くて、派手な髪色に奇抜な服装、目立つ存在だったけど、ただの女の子だと思っていた。いや、どこかに見覚えがあるような気もしたが、思い出せなかった。ただ、なんとなく気になって、目を離せなかった。
その理由が何だったのか、今ではよくわからない。ただ、彼女が目の前にいると、何かが突き動かされるような気がした。
そして、何も考えずに行動してしまった。
「よいしょと。」
軽い気持ちで、思い切って近づいて、手に持っていたそれで一突きした。目の前の女性が倒れた瞬間、俺はすぐに後悔した。だが、それでもそのときはまだ、彼女が誰かなんて気づきもしなかった。
逃げた。だって、だれもが俺のことなんて気にしないと思っていたから。
そして数日後、その報道を見たとき、俺は初めて気づいた。
「皇様、死亡」
どこか遠くで、ひときわ目立つニュースだった。
俺の推し、皇様が…殺された?いや、待て、俺がその犯人?どうしてこんなことに…?
死亡報道の中で、詳細な情報がどんどん明かされていった。
「すめらぎ サマー、大人気Vtuber死亡。犯人逃走中。」
一瞬、頭の中が真っ白になった。まさか、あの女性が皇様だったなんて。
「犯人は未だ捕まらず。追跡中。」
俺の心臓が一気に早く打ち始めた。これ、やばい。こんなことになるなんて、全く予想だにしていなかった。
「俺がやったのか?」
ようやくその事実に気づいたとき、震えが止まらなかった。もう遅いんだ。何も考えずにやったことが、重くのしかかっている。
報道が続く。
「皇様の命を奪った犯人を追うファンたち」
やべえ、追ってくるのはメディアや警察だけじゃない。ファンだ。700万人のファンが俺を見つけ出すんだ。奴らは何が何でも、皇様を取り戻すために動く。あいつの推しだった、俺を。
「まさか、こんなことになるなんて…」
背筋が寒くなった。俺がやったことが、どれほどの衝撃を与えたのか、今さら知っても遅い。でも、その時にはもう、もう誰も助けてはくれない。
俺はただの「犯人」になっていた。