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#鬱展開
Mist-404
1,165
mogyumogyuGemi
646
東京湾・ハルシオン防衛結界内
ドォォォォォン!!
海面が爆ぜる。
間宮トオルの展開した障壁へ、グランの一撃が叩き込まれていた。
透明な壁が大きく歪み、その中心から蜘蛛の巣状の亀裂が広がる。
間宮の表情から、初めて余裕が薄れる。
「……想定値を上回りますか。」
グランは眼帯に触れることもなく、赤い片目で間宮を睨む。
「私を数字で測るな。」
一歩。
ただ踏み込んだだけで海面が沈む。
間宮の解析装置が一斉に警告音を鳴らした。
Ability Research
Ability Research(能力研究)
間宮の周囲へ複数の解析端末が展開。
グランの重心。
呼吸。
視線。
筋肉の収縮。
攻撃へ移る直前の僅かな予備動作。
あらゆる情報が数値化されていく。
「右肩の収縮を確認。」
「次撃――右。」
グランが踏み込む。
間宮は攻撃より先に左へ回避した。
直後。
グランの右拳が空を穿つ。
拳そのものは外れた。
だが――
「……っ!」
拳圧だけで間宮の身体が吹き飛んだ。
ズガァァァン!!
海面を何度も跳ね、そのまま数十メートル後方まで押し流される。
イレイダが目を細める。
「予測して避けても、余波までは殺せねぇか。」
ソウヤもグランを見つめていた。
「……強すぎる。」
頭の奥からレイの声がする。
「よく見ておけ。」
「強さとは、能力の性能だけでは決まらない。」
マラン
「グラン!」
マランが動こうとする。
だがグランが片手を上げた。
「来るな、マラン。」
「……。」
「お前はペインと共に周囲を警戒しろ。」
マランは一瞬だけ間宮を見る。
そして、
「ああ。」
命令に従い後退した。
ペインが肩を回しながら笑う。
「グラン一人で十分だろ。」
マランは答えない。
ただ戦況を見つめている。
まだこの時――
グランとマランの間には、確かな信頼があった。
能研・NWO・ハルシオン
「行くぞ!みんな!」
NWOのメンバーに千太が呼びかける。
「ソウヤ!」
声が飛ぶ。
振り向くと千太だった。
「こっちに来い。」
「どうした?」
千太が海面を指す。
「下だ。」
「……下?」
タジも端末を確認する。
その顔色が変わった。
「待ってくれ……!」
海底探査データを拡大。
東京湾の地下。
通常なら岩盤しか存在しないはずの深度に――巨大な人工構造物が映っていた。
惣一が近づく。
「規模は?」
「まだ全容を測定できません。」
タジが画面を操作する。
「ですが、少なくとも……能研本部より遥かに大きい。」
フランも通信越しに反応する。
『ハルシオンでも確認した。』
『海底約三千メートル。巨大なエネルギー反応がある。』
イレイダが間宮を見る。
「……最初からこれを隠すために戦ってたのか?」
間宮の笑み
海面から間宮が立ち上がる。
白衣は破れ、口元から血が流れている。
それでも笑っていた。
「ようやく見つけましたか。」
グランの赤い瞳が細くなる。
「何がある。」
間宮は眼鏡を直す。
「研究施設ですよ。」
「ただし――」
笑みが深くなる。
「あなた方が想像しているものより、遥かに重要な。」
その瞬間。
ゴゴゴゴゴゴ……!!
東京湾全体が震え始めた。
深海
海底。
暗闇の中で、巨大な施設に次々と明かりが灯る。
第一ブロック。
第二ブロック。
第三ブロック。
そして最深部。
無数の装置へエネルギーが供給されていく。
中央の巨大な扉に、一つの文字が浮かび上がった。
GENESIS
異変
「エネルギー値、急上昇!」
タジが叫ぶ。
「何か起動します!」
フランの声が通信へ割り込む。
『全員、海面から離れろ!』
次の瞬間――
ドォォォォォォォン!!!!
海が割れた。
巨大な円形構造物が海底から浮上を開始する。
ハルシオンの巨体すら揺れる。
「総員、衝撃に備えろ!」
フランの号令。
ハルシオンから防御機構が展開され、東京湾沿岸を覆う。
間宮の目的
惣一が間宮を睨む。
「能力者を集めて、そこで何をしている。」
「……。」
間宮は答えない。
代わりにソウヤを見る。
その視線にソウヤが気づく。
「また俺か。」
「ええ。」
「君は特別です。」
間宮の目が、異様なほどソウヤへ集中する。
「正確には――」
「君の中に存在する、もう一人が。」
ソウヤの表情が止まった。
「……何?」
レイから返事はない。
間宮は続けようとする。
だが――
ドンッ!!
グランが一瞬で間宮との距離を潰した。
「余計な話はそこまでだ。」
間宮は寸前で障壁を展開。
バギィィィィン!!
障壁が砕ける。
間宮の身体が再び吹き飛ばされた。
千太の違和感
千太だけが、戦場ではなく海底施設を見ていた。
「……おかしい。」
ソウヤが振り返る。
「千太?」
「さっきから未来が分岐し続けてる。」
千太の額から汗が流れる。
「こんなの……今までなかった。」
「何が見える?」
「分からない。」
千太は目を細める。
「ただ――」
一瞬。
千太の脳裏を映像が駆け抜ける。
崩壊した都市。
燃える大地。
空を覆う巨大な何か。
立ち尽くすソウヤ。
そして――
見たこともないほど巨大な戦い。
千太が目を開く。
「……ここで間宮を止めないと。」
「この先、とんでもないことになる。」
突入作戦
惣一が即座に判断する。
「間宮との戦闘と海底施設攻略を分ける。」
イレイダが刀を肩へ乗せる。
「私たちは下か?」
「ああ。」
惣一が全員を見る。
「能研はGENESISの正体を確認する。」
フランも応じる。
『ハルシオンが突入経路を作る。』
千太が前へ出た。
「我々も行く。」
ソウヤを見る。
「行くぞ、ソウヤ。」
「ああ!」
その後方。
マランがグランを見る。
「俺たちは?」
グランは間宮から視線を外さない。
「待機だ。」
「Azが用意したものがこれだけとは思えない。」
マランは頷く。
「分かった。」
エピローグ
海底施設。
最深部。
誰もいない巨大な研究区画で、警告灯だけが赤く点滅していた。
第一捕獲対象――ソウヤ。
Transmigratio――観測継続。
GENESIS――第二段階移行。
そして。
その下に、新たな表示が浮かぶ。
《適合対象確認》
《人格反応検出》
ソウヤの意識の奥深く。
これまで沈黙していたレイが、初めて明確な動揺を見せた。
「……これは。」
ソウヤが足を止める。
(レイ?)
長い沈黙。
そして――
「ソウヤ。」
「あそこへ行くなら、覚悟しておけ。」
(何がある?)
レイは答えなかった。
ただ一言。
「私の過去だ。」
海底への扉が開いていく。
まだ誰も知らない。
その先にあるものが――
ソウヤとレイ、そして世界そのものの運命へ繋がっていることを。
第75話 完
コメント
1件
第74話、読ませていただきました。グランと間宮の攻防、解析と予測を超える力の描写が圧巻でした。海底三千メートルに隠されたGENESISの出現で、物語のスケールが一気に広がりましたね。そして千太の違和感や、レイが初めて見せた動揺――「私の過去だ」の一言に、今後の展開への期待が高まります。ソウヤとレイの関係に新たな謎が加わり、続きが気になって仕方ありません。