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懐かしい名を聞かされた事で、少し正気を取り戻す事に成功したレイブは、学院の随所に設けられていた談話室の一席にラマスを誘い、両手に清廉な水を汲み入れたコップを持って腰を下ろしながら言う。
「さっ飲んで♪ んでラマス、シパイの言いつけでここにやって来たって事はさ、シパイは元気でいる、そう言うことなんだよね? あぁ、若しかしたらイシビベノブやガトなんかにも既に出会っちゃったりしているのかな? うふふ、色々聞かせてくれるかな、ラマス? まずは君のお師匠、シパイの事からだ、元気なんだろう? 魔術師としてバリバリやっているんだろうなぁ! どうだい?」
ここ数年の間、殆(ほとん)ど笑う事がなかったレイブが珍しく子供の様な表情を浮かべてラマスに問い掛けて、差し出された水を一口含みながらラマスが答える。
「いいえ、お師匠は魔術師を引退せざる得なくなってしまいましてぇ、多分今頃は落込み捲っているんだと思いますぅ! んで、アタシが闘竜と獣奴(じゅうど)を引き継いだ、態(てい)、にして、叔父様を訪ねて来たんですよぉ!」
「は?」
「勿論、イシビベノブ伯父様やガト叔母様にはまだお会いした事は無いですよ♪ うふ♪」
「ええっとぉ、一体どう言うぅ?」
その後、シパイの弟子らしい少女ラマスがレイブに話して聞かせてくれた内容は大体こんな感じであった。
彼女自身は未だ魔術師となるための最初の条件である、魔解施術を受けていないのだそうだ。
と言うか完了していない、この方が正確だろう。
魔力災害に襲われて石化でもし始めていれば兎も角、健康な子供達に施した場合、失敗する事もあるからだ。
それでも、多くの親は子供を魔術師にしたがるのだ。
まあ、これは然程(さほど)珍しい話でも無い……
里長(さとおさ)や有力者の家に生まれた次男や次女以降の子弟は、時として魔力災害、所謂(いわゆる)石化災害に出会っていないにも拘(かかわ)らず、魔術師の弟子として預けられる、そんな事も珍しくは無いのである。
理由はしかとは判っていないが、類推する所では、家を継ぐ事が出来ない子供達が、せめて長く安定した人生を送れるように…… そんな親心が働いたのではないか? レイブ個人はそう判断している。
何しろ、魔術師として生業(なりわい)を行う者達は、厳しい修行と引き換えだとは言え、一般人と比べて三倍から五倍以上の長寿が約束されるのだ、それを望む家族が少なからず居ても可笑しい事では無いであろう。
実際、彼女は西端であるこのグイトゥより更に南西に進んだ小さな里、サリトと言う村で生まれたらしい。
六歳の時、集落を襲った魔力災害から逃れ、東に向けて避難していた最中に、反対側、西に向かって逃げてきたシパイ達に出会い、以降、彼に従ってその地に留まり生活を続けて来た、そうレイブに語って聞かせたのである。