ダリルと呼ばれた男のひとは座ったまま天を仰いでいる
やがて何かに観念したかのような面持ちでわたしを見て、そしてエルフの店員さんを見る。
「まあ、そうなるのは分かってはいたが……」
「たまには仕事らしい仕事もいいじゃないか。おかわりいるかい?」
仕事ってわたしの事だろうけど、わたしにはそのやり取りがなんなのか分からない。とりあえずこちらも空のカップを両手でアピールする。カモミールティーって言うらしい、市場で探してみよう。
そう思ってるとエルフの店員さんは小さな袋に入った茶葉をくれた。わたしニッコニコである。
「まずだか、弓は使えるのか?」
「前には飛ぶようになりました(キリッ)」
突然された質問にわたしは真剣な顔を作って答える。この2ヶ月での成果は確かなもの。
「そりゃ幼子でも矢をつがえて引けば前には飛ぶだろうよ。」
2ヶ月が敢えなく砕け散った。
「ダリルはもう少し言葉を選んだほうがいいよ。この子いま心のホウキで拾い集めてるよ」
苦笑いで無神経な肉だるまをたしなめてくれる店員さんが優しすぎる。
「俺にロズウェルのような心遣いは無理だ」
ふーんっ。この人ロズウェルって言うんだ。というか諦めないでわたしに優しくして。
「まあ、そんな感じでやっと前には飛ぶようになったんだけど、まだウサギも仕留められてないんですよぉ」
やっと前にと言うのが理解出来ないと言いたげな沈黙が少し流れたけど、獲物の狩れない狩人と言うのが悩み事としては十分だと言うことだけは伝わったみたいで。
「とりあえず隣で腕を見せてもらえるか?」
そう言い立ち上がるダリルさんに頷いて返事し、食べ切れてないお菓子とお茶を口いっぱいに頬張り立ち上がる。
「……カエルフ」
さっきの弓に潰されたことを思い出したのかな。わたしの膨らんだ頬を見てそう呟かれた。
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