『……はぁ』
外を見つめる。外に笑ってるみんなは優しく笑っている。
いつからだろうか。この世界がつまらないと感じたのは…
別に、皆が嫌いになった訳じゃない。ただ、…つまらなかったんや。
グルッペンに誘われ、この軍にはいった。
軍に入った頃は、本当に楽しかった。にこにこと笑って、みんなで内ゲバしあって、…本当に
楽しかった。
ゾムが来た頃だろうか。何か此処にいる理由が無くなった気がして、役目を終えたような気がして俺は、この軍から去った
…否、見守るようになった。
誰にも気づかれないように。遠くから見守るんや
まぁ、グルッペンには気づかれてそうやけどな
『…スゥー、……ハァー』
甘い煙草の煙の匂いが周囲に漂う。
そういえば鬱と同じ種類を今日は吸っている。
煙草は、いつもはマールボロを吸っているが、…たまに…たまに、鬱や、コネシマ、シャオロンの吸っている煙草を吸いたくなる。
彼らの匂いがするから。彼らを思い出せるから。
…ふと、息がしずらくなる、
いつも、…いつも、…怖くなる。彼らを思い出す度楽しい思い出が戻ってくる、…でもその代わりにすごい恐怖が襲う。
俺がここに居た唯一の証が無くなっていたらどうしようって
…明日は、どうしても……、軍に帰りたいと思った。
だから、……やっては行けないことをやってしまった。
深夜、軍に忍び込み。彼を攫った。
名前はショッピと言うらしい。自分によく似た髪によく似た見た目は、…よく自分に紛れた。
ショッピという彼を、1日中起こさず自身の部屋に閉じ込める。
なんて作業を行っているうち、朝方になってしまった。
彼の服や、彼の顔をメイクで誤魔化しそのまま軍に向かう。
そう、今日だけ俺はショッピという青年になる。
綺麗な紫の瞳に何処か闇を隠しながら、彼はゆっくりと歩いてゆく。
なんて事ない1日だった。バレなくて本当によかった。みんなも、笑っていた。
自身の誕生日に、彼らと一緒に居られてよかった。
でも、ショッピ君には悪いことをした。
彼にも悪いし、そろそろ軍から去るか。と門から出ようとする。
その時、後ろから話しかけられる。
「もう、…戻ってこないのか?」
『……どうしたんですか?グルッペンさん。俺は、直ぐに戻りますよ。俺今からタバコ買いに行ってくるだけですから。』
「…言い方が悪かったな。兄さん、戻ってきて欲しい。」
『…はぁ、……バレないようにしたんだがな。』
『、……まぁ、グルッペンにはバレるとは思っとったけど、…そう言われるとは思っとらんかったわ』
『グルッペン…、俺はきっと戻らんよ』
この先もずっと、……ずっと。
『…俺の残した唯一の証は、残っとったから。』
「……どういう意味や。」
『………それは、……紫色に聞いてみたらどうやろうな。…俺は答えられへんわ。』
前へと歩き出す
「……兄さんッ!!!」
『…また会う時は、もっと成長しとけよ。グルッペン・フューラー』
ダッと、大きく足音をたてそのまま走り去る。
グルッペンは、こちらを見つめるだけで追いかけてくることはなかった。
部屋に戻ると、ショッピ君はもう起きているみたいでこちらを警戒していた。
『もっと、国の幹部なんやから例え睡眠中であっても気張っといた方がええで。』
「…あんたは、………誰ですか。俺に何をするつもりですか。」
殺気ましましの彼はこちらを睨みつける。
『……ゾムみたいなやつやな、w…まぁ、ゾムの後輩やからなぁ。』
「…なんでゾムさんを?」
『そうやって詰め寄ってくる感じはトントン似やな。』
「…はぁー、…何でもええんではよ条件とか言ってくれます?アンタが何か話したい事があるのは分かってるんすよ。生憎、貴方のこと俺知ってますし。話してたら何となく分かりましたわ。」
『…お、コネシマみたいな感じやなぁ。…コネシマの冷静さ、トントンの詰め寄り方、ゾムの殺意、…期待の新人やな。』
「……悪いですけど、もう2人も下に後輩居るんで。新人って呼ばれるアレじゃないんですよね。」
『……そぉか、』
「それよりも俺は、」
『俺がショッピ、君を攫った理由を聞きたいんやろ?ゆったり話させてくれや。』
『折角、今日はこんなにも月が綺麗なんやから。楽しい話をしようや。』
月の光に照らされた瞳は、暗くそして美しかった。
「……永い夜になりそうですね、」
『…あぁ。』
『俺はな、…実際この軍が大好きやねん。』
『……でも、ある時気づいたんよ。…あの時はそぉやな。ゾムが入ってきた時ぐらいやったかな。そんときに俺、大怪我してん。』
『…大怪我した時、気づいたんよな。』
『この軍は俺が居らんくても回り続けるって』
『まぁ、実際誰かひとり抜けても回り続けるって言うのは変わらんよな…、抜けた所で残りのメンバーで穴埋めすれば回り続けるんやから。』
「……」
『………そのあとは、俺が居なくてもスムーズに回り続けられるようにゾムに徹底的に動きを教えて、ロボロにゾムのお世話任せて、シャオロンに無理しないでって伝えて、…他のメンバーにも何か伝えたんやけど忘れてもうたなぁ。』
『……でも、気がかりがあってん。』
『………コネシマが…彼奴が…、寂しいって思ったら嫌やなぁって』
「コネシマさんが?」
『……相棒の鬱が居ても、彼奴はあの頃はずっと情報部に付きっきりやってんな。』
『それに、他のメンバーも任務入っててずっと忙しそうやったし。』
『……コネシマも任務入ってて忙しいんやろうけど、……でも、彼奴は俺に懐いとったからそれの状況で心に余裕が無くなるんやないかって…思ってん。』
「…」
『……そんな時、俺は1人の子供を拾ったんよ。まぁ、子供言うても15歳ぐらいやったかな。』
『その頃から俺はちょくちょく軍から姿消してて、そん時に見つけた子供に、色々と戦い方とか教えてんな。』
「………、」
『優しくして、話しかけたら。思った以上に懐いてな。よく兄さん!なんて、話しかけてくれたんやっけなぁ。』
『その子供が18になった時、急遽コネシマが軍学校に臨時の先生として行ったときがあったんよ』
『…その時に、その子供が軍学校行きたいいうてな。コネシマも20前半やったからその子供に先輩って呼ばせてたって言ってた気がするなぁ。』
『…いつの間にか、2人は俺がおらんくても回り続ける事が出来てん。』
『やからな、あの子が卒業した20の時に、俺は軍を出たんよ。』
『その子の前からも姿を消した。』
「……にいさん。」
『その子を軍に残した事によって、コネシマはその子で俺が居なくなった事の寂しさを消そうとしてた。』
『今日だって、…その子のことを気にかけていた』
『…本当によかった。俺が軍に残した唯一の俺がいた証が残っていて…本当に良かった。』
『…ありがとうね。ショッピくん、』
複雑な顔をする君の頭を優しく撫でる。
「…なん、…ッ…で、…そうか、…あなたが…。」
泣きじゃくりつつある君に酷なことを告げる俺を許して欲しい。
『…証を消さないで欲しい。いつもありがとぉな。それじゃあまたな。』
ダンッと首根っこの所に手刀を食らわし、そのまま背負って彼を軍に連れていく。
彼をベッドに寝かせて、窓から飛び降りようと窓を開ける。
「ショッピ〜?大丈夫か?」
ガチャリ、ドアを開けられる。
「……は?」
『……扉を開ける時にノックをしない癖は直して欲しいわ。ほんま、……』
「にいさ、…ッ……兄さんッッ!!!」
こちらに走ってくるが、俺はそんなの気にしないと窓から飛び降りる。
『…本当に、お前が元気でよかった。』
その瞳が、…本当に輝いてくれていてよかった。
俺が居た証、次来る時まで残っていてください。
俺が居た証、彼奴を守ってやってください。
『本当に、酷なことを望んでごめんね。ショッピ君。』
『………、主役なんてそんないい言葉俺には合わないけれどでも、一つだけ。一つだけ…お願いです。』
証と彼が俺が居なくても光輝いてください。
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