ダークブラウンを基調とした店内は奥行きがあり、天井には、オシャレなデザインの同系色のシーリングファンライトが、数基設置されている。
モンステラの葉をモチーフにしたファンのデザインが、南国ムードを引き立て、海側に面している席は、全面ガラス張りで、湘南の海が一望できる開放的な空間だった。
リゾートホテルのロビーを思わせる内装に、恵菜は『素敵……』と呟いている。
二人は海を一望できる一番奥の席に案内され、ナシゴレンのランチセットを二つオーダーした。
料理が運ばれるまで、恵菜は、窓越しに広がる青い景色に釘付けになっている。
遠くには富士山と江ノ島が見え、『わぁ……凄い!』と、小さく声を上げる彼女。
(ヤベェな。恵菜さん…………無邪気に外を眺める姿がマジで可愛い……)
笑みを零しながら外を見つめる恵菜に、頬杖を突きながら眼差しを向ける純。
「海に来たのは……小さい頃に家族で海水浴に行って以来なので、すごく嬉しいです」
キラキラと輝きを放つ海から、純に視線を向けて、はにかむような笑みを映す恵菜。
「今日は湘南に来て正解だったな」
「はい」
控えめな笑顔を向けてくれる彼女に、純は柄にもなく、胸がときめいてしまう。
(今の俺は、彼女の笑顔を、独り占めしてるんだよな……)
「お待たせいたしました。ナシゴレンのランチセットでございます」
純がぼんやりと思考の海を漂っていると、店員の声にハッとして引き上げられる。
テーブルの上には、ランチセットのサラダ、トムヤムクン、メインのナシゴレンとマンゴーラッシーが並べられた。
「さっそく食べようか」
「はい」
恵菜が『いただきます』と呟きながら手を合わせると、フォークを手にして、綺麗な所作でサラダを食べ始めた。
(食べる姿も綺麗だし、きっと、ご両親から愛情いっぱいに育てられたんだろうなぁ……)
彼女の食事をしている姿に、見惚れてしまいそうになる純。
「谷岡さん? 食べないんですか? サラダは野菜がシャキシャキしていて美味しいですよ」
まだ食事に手を付けていない純に、不思議そうな表情で見つめてくる恵菜。
「あっ……いや、食うよ」
彼は彼女に指摘されると、苦笑しながら、慌ててフォークを取った。
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